住友林業株式会社(社長:光吉敏郎、本社:東京都千代田区)が2024年の「ウッドデザイン賞」を全10案件で受賞した。2015年の初回から10年連続での受賞となり、木材を活用した持続可能な建築と技術が改めて評価された。
木の可能性を広げ、社会全体の脱炭素に貢献
住友林業は、森林経営から木材の加工、建築、不動産開発、さらには木質バイオマス発電に至るまで、「木」を中心とした事業をグローバルに展開している。「ウッドデザイン賞」は、木材の価値をデザインで再解釈し、社会課題の解決に貢献する活動や技術を顕彰する制度で、同社の取り組みが10年連続で評価を受けている。
特に「ライフスタイルデザイン部門」「ソーシャルデザイン部門」「ハートフルデザイン部門」の3つのカテゴリーで高い評価を得ており、持続可能なライフスタイルの提案や地域社会の持続性向上、心身の健やかさを追求するデザインが注目された。住友林業グループのプロジェクトは、日本の伝統的な建築様式や地元の材料を活用し、豊かな生活空間を提供している。
また、2030年までの長期ビジョン「Mission TREEING 2030」を掲げ、その一環として「ウッドサイクル」の推進を目指している。これにより、森林のCO2吸収量を増加させ、木造建築を通じて炭素を固定し、社会全体の脱炭素に寄与する考えだ。今回の受賞はこれまでの取り組みの成果を示すもので、今後も木材を中心とした持続可能な社会の実現を目指していく方針だ。
【各分野での主な受賞案件】
■建築・空間分野
日本の暮らしを愉しむ家
住友林業が提案する住宅「日本の暮らしを愉しむ家」は、コロナ禍でのテレワーク普及を受け、家での時間を豊かに過ごせる設計が特徴。大分展示場のモデル棟では、和室を中心に「田の字型」でキッチン、ダイニング、リビングを配置し、日本家屋の要素を取り入れた続き間の空間を演出。外観は平屋風で、内部には国産ナラ材を用いた勾配天井が広がり、1.5階の提案で、共働き世帯をはじめ幅広い層から人気を集めている。また、構造材や内装材には54.6%の国産材が使用され、地元の竹細工やい草も取り入れている。
■技術・建材分野
木被覆角形鋼管柱
木材のみで耐火性を実現した角形鋼管柱の新技術を開発。カラマツ材とスギ材を使用し、1時間耐火構造の国土交通大臣認定を取得。被覆材を分割製造することで工事後の施工も可能となり、傷や汚れを防ぎやすい設計となっている。木材のみを使ったため炭素固定量が増え、環境負荷を軽減。オフィスや教育施設などで、木質感のある豊かな建築空間を提供する。
■調査・研究分野
木の心理療法室が精神・心理療法に与える効果に関する予備的研究
住友林業と東京慈恵会医科大学、BrainEnergyは、実際の病院診療室で20名のうつ病患者を対象にした臨床試験を実施。2つの心理療法室のうち、1つの部屋を国産スギ材で木質化し、木の香りが患者の治療継続に好影響を与えることが示唆された。今後、この成果をもとに病院などの快適な空間づくりへ応用することを目指している。