YKK不動産株式会社が富山県黒部市で開発を進めてきた「パッシブタウン第5街区」が完成し、竣工式が行われた。地域の森林資源を活用し、再生可能エネルギーを取り入れた中高層木造集合住宅として、脱炭素社会の実現に向けた先進的な取り組みとなっている。

地域資源を活かした木造中高層住宅。
第5街区は、パッシブタウン計画の最終区画として位置づけられる。建設には富山県産の木材を多用し、全体の使用木材の87%を県内から調達した。構造には、低炭素型のECMコンクリートも一部採用。これらの取り組みにより、建設段階で排出される二酸化炭素(CO2)量は同規模の鉄筋コンクリート(RC)造の集合住宅と比較して約半分に抑えられる見込みだ。
さらに、伐採跡地へのスギの植樹や継続的な育林活動を実施することで、環境負荷の相殺も進めている。2023年9月には東部地域の山林に200本の苗木を植樹し、地域循環型のまちづくりを具現化している。
地域資源を活かした木造中高層住宅。
前期街区で得た居住環境データをもとに、断熱性能や通風効率などの建築仕様を最適化され、建物外皮の断熱性能は、平均熱貫流率Ua値0.23を達成した。高性能なYKK AP製のトリプルガラス木製窓「APW 651」も導入され、高気密・高断熱を実現している。これにより、運用時の冷暖房エネルギー消費を最小限に抑える設計がなされている。
水素を活用した次世代エネルギー供給
3棟ある住宅のうち1棟には、日本の集合住宅では初となるPower to Gas(P2G)システムを導入。太陽光発電による余剰電力を用いて水素を生成・貯蔵し、季節間でエネルギーを移行させる。エネルギー自給率は最大95%に達する見通しで、災害時には地域の防災拠点としての活用も視野に入れている。
省エネ・創エネ・蓄エネによる街区の完成
第5街区では、自然採光や換気を取り入れたパッシブデザインに加え、再生可能エネルギーと水素エネルギーの蓄積を組み合わせた設計がなされている。資材調達から解体までの建物ライフサイクル全体で排出されるCO2量は、RC造の集合住宅に比べ約6割削減される見込みとなっている。
パッシブタウン第5街区は、地域の資源と技術を融合させ、住宅の未来像を提示する場となった。今後は、居住後の環境性能データの検証と公表を通じて、さらなる発展につなげていく予定だ。
