大和ハウス工業株式会社が取り組む「水害リスク・熱中症対策」と「地中熱・排熱利用システム」が、環境省主催の「令和6年度気候変動アクション環境大臣表彰」で高く評価された。これらの受賞内容は、同社の持続可能な未来を目指した革新的な取り組みを示すものだ。
「ひと・まち・くらしを守る16の取組み」が示す気候変動適応策と、
地中熱と排熱を活用した環境技術の将来像。
大和ハウス工業株式会社は、創業100周年を見据えた「Challenge ZERO 2055」の環境ビジョンのもと、温室効果ガス排出ゼロを目指す取り組みを進めている。同社が受賞した「ひと・まち・くらしを守る16の取組み」では、水害リスクへの対策や熱中症予防が高く評価された。具体的には、物流施設における浸水対策や自治体との災害時連携協定の締結、さらには熱中症リスクを見える化する「ウェザリー」の現場導入が含まれている。
特に、浸水リスクを低減するための物流施設の設計と災害時対応協定は、全国17自治体と締結され、実際の防災拠点としての役割を果たしている。例えば、長野県千曲市の「DPL長野千曲」では災害発生時に最大48人の避難者を受け入れることが可能だ。
■「DPL長野千曲」さまざまな水害リスクに対する取り組み
・ハザードマップ上で浸水域にある当社事務所での水害対策
・災害時用の水や食料などの備蓄や災害時対応訓練の実施
・サプライヤー工場での水リスク調査
・災害時の停電において雨天でも約8日間電力を供給できる「全天候型3電池連携システム」の開発
・グリーンインフラの考えを採り入れた住宅分譲地の開発
・BCP対策をコンセプトとした民間建物の提案
・雨水を貯留、浸透させ有効活用を促すグリーンインフラ技術「メビオトープ」の開発
・浸透機能と保水機能を兼備した独自の土壌システム「レインガーデン」の構築
・衛星SAR(※1)による広域豪雨災害被害の早期把握技術の開発・実証
・気象予報データを活用した浸水アラートシステムの開発・運用
※1.人工衛星に搭載された「合成開口レーダー(SAR-Synthetic Aperture Rader)」。レーダーの反射を観測したSAR画像を解析することにより地表の状態の変化や地盤変位を求めることが可能。レーダーは雲を透過して地表に到達するため光学画像とは異なり悪天候時でも地表の観測が可能。
もう一つの受賞対象である「地中熱・排熱利用システム」は、未来工業の工場において構築された。大阪テクノクラートと共同で、水冷ヒートポンプを活用し、地中熱と低温排熱を冷暖房や設備冷却に再利用する仕組みだ。このシステムは、一般的な建築物と比較して年間1,000トン以上のCO2排出削減を達成した。今後も全国の工場への導入が予定されている。
大和ハウス工業は、これらの取り組みを通じて、気候変動への適応と緩和の両面で新たな技術革新モデルを示している。同社の活動は、気候危機時代における社会の持続可能性を模索する企業の先駆的事例といえるだろう。