株式会社IHIは、シンガポール科学技術研究庁(A*STAR)傘下の研究機関ISCE²と共同で、水素とCO₂を原料とする持続可能な航空燃料(SAF)製造技術を実証する小型スケールの試験装置を完成させた。この装置は1日あたり5kgの液体炭化水素を製造可能で、2030年頃の商用化を目指すIHIの重要な一歩となる。2025年1月15日にはシンガポールで開所式が開催され、100名を超える関係者が参加した。

航空業界の脱炭素化を支える新技術

国際民間航空機関(ICAO)が2050年までに航空機のCO₂排出を実質ゼロにする目標を掲げる中、持続可能な航空燃料(SAF)の普及が急務となっている。
今回完成した試験装置は、水素とCO₂を原料として液体炭化水素を合成する技術を検証するもので、1日あたり5kgの製造能力を持つ。装置は、運転条件の最適化や反応データの取得を可能にし、効率的なプロセス構築に向けた重要な役割を果たす。
IHIは2022年に、SAF合成に適した新触媒を開発。この触媒はラボ試験において世界トップクラスの性能を示しており、今回の試験装置はその技術を実用化に向けた次の段階へと進めるものだ。さらに、IHIは石油・化学メーカーや航空業界と連携し、2020年代後半にASTM認証を取得する計画を進めている。

2050年目標に向けた具体的な取り組み

SAFの商用化は、航空業界の脱炭素化において不可欠な要素だ。従来の化石燃料と異なり、SAFはライフサイクル全体でCO₂排出量を大幅に削減可能で、既存インフラをそのまま利用できる利点を持つ。
IHIは今後、シンガポールを拠点に技術をさらに進化させ、商用化を目指して研究開発を加速させる方針だ。今回の試験装置の成果を活用し、2030年頃の実用化を視野に入れた取り組みを推進する。
シンガポールの持続可能性目標を背景に、A*STARの研究基盤とIHIの技術力が結集したこのプロジェクトは、航空業界の未来を切り開くものとなる。2050年のCO₂排出実質ゼロという長期目標に向け、SAF技術の進展は引き続き注目されるだろう。

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