理化学研究所(理研)は、スーパーコンピュータ「富岳」の次世代となる新システム「富岳NEXT」の開発を1月から開始する。AIとシミュレーションを密接に結びつけ、科学的な仮説生成から実証までを自動化する「AI for Science」を目指したこの計画は、日本の科学技術と産業競争力をさらに強化するものになるだろう。
AIと科学の融合が生む新たな可能性
科学技術の進展と産業競争力の向上を目指し、理化学研究所がスーパーコンピュータ「富岳」の後継機となる「富岳NEXT」の開発を開始する。新たなシステムは、これまでの「富岳」で培った技術を基盤に、シミュレーションとAIの性能を世界最高水準にまで引き上げることを目標としている。
従来のスーパーコンピュータは主にシミュレーション性能の向上を目指してきたが、近年のAI技術の進展に伴い、AIを活用した科学的研究の加速が求められている。「富岳NEXT」はこの要求に応える形で、シミュレーションとAIの両分野で最高水準の性能を発揮し、科学上の仮説生成や実証を高度化する計算基盤を構築する。この「AI for Science」アプローチにより、研究プロセス全体を変革し、より迅速で正確な成果を生み出すことが期待されている。
新システムの具体的な性能目標としては、「富岳」と比較してシミュレーション性能を5~10倍以上向上させるほか、AI処理においては世界最高水準の実効性能である50EFLOPS以上を達成する計画だ。また、電力効率の向上も重視されており、持続可能な運用が可能な設計が求められている。
次世代計算基盤が社会と産業に与える影響
「富岳NEXT」の開発は、日本の科学技術基盤を強化するだけでなく、産業競争力の向上にも寄与すると考えられる。特にAI技術の進展に伴い、計算基盤への需要が多様化している現在、新たなスーパーコンピュータは社会的課題の解決や新産業の創出も可能にするはずだ。
理化学研究所は、国内外の大学や研究機関、民間企業と連携し、このプロジェクトを推進するための新組織「次世代計算基盤開発部門」を設立する予定で、この取り組みは産学官の枠を超えた協力の象徴として、広範な研究者や技術者が参加するプラットフォームになる。
未来を見据えた「富岳NEXT」の展望
「富岳NEXT」は、従来のシミュレーションアプリケーションをさらに高速化するとともに、AI技術との融合を通じて、全く新しい研究分野を切り開く可能性を秘めている。また、このプロジェクトは、量子コンピュータとの連携を視野に入れた設計を進めており、これにより次世代の科学的発見や技術革新を促進することが期待される。
今後、基本設計を進める中で、理化学研究所と民間企業、国内外の研究機関が連携しながら、プロジェクトを具体化していく。「富岳NEXT」の完成は、日本のみならず世界に向けた科学技術の次の時代を開く、重要な一歩となる。