地球温暖化の進行により、日本固有の生態系が危機に瀕している。中部山岳国立公園では、これまで行為規制を通じて自然環境の保護を図ってきたが、気候変動の影響が顕在化しつつあり、これらの課題に対応すべく、環境省と複数の研究機関が連携して「生物多様性保全コンソーシアム」を設立した。この枠組みを通じ、国立公園の自然環境を科学的に把握して、適応策を検討する取り組みが本格化している。

気候変動がもたらす影響、中部山岳国立公園の現状とは。

現在、気候変動の影響が世界各地で深刻化している。日本においても、異常気象の頻発、動植物の生息域の変化などが観測されており、特に高山地帯では生物多様性の損失が顕著だ。中部山岳国立公園も例外ではなく、固有種の絶滅リスクや雪解け時期の変動による水資源管理の課題が浮上している。
これまで同公園では、自然公園法に基づく規制によって一定の保護が進められてきた。しかし、気候変動による影響はこれまでの保全施策だけでは対応しきれない規模にまで達しているのが現実だ。例えば降雪量の減少により、生態系が大きく変化し、高山植物の生育環境が脅かされている。さらに気温の上昇に伴い、低地に生息していた生物が高山帯へと侵入し、固有種との競争が激化するケースも報告されているのだ。

研究機関と行政の連携、科学的データに基づく適応策の策定。

これらの多様な課題に対応するため、環境省中部山岳国立公園管理事務所は、国有林を管轄する森林管理署と連携し、調査・研究を行う大学や研究機関との協力体制を強化。「生物多様性保全コンソーシアム」を設立し、気候変動による影響を網羅的に把握し、科学的根拠に基づく適応策を策定する体制を整えた。
コンソーシアムの目的は、研究機関が収集した調査・研究成果を共有し、それを公園管理に活用することだ。例えば高山植物の移動パターンを解析し、保全すべきエリアを特定する試みが進行中。また雪解け水の流出パターンを把握し、水資源管理の適応策を検討する研究も進められている。これらの知見をもとに、環境省や森林管理署は具体的な施策の実施を検討し、自然環境の変化に柔軟に対応していく方針だ。

最新研究成果を一般にも公開し、オープンナレッジの場づくりへ。

コンソーシアムは研究機関同士の連携を強化するだけでなく、その成果を一般にも広く公開することで、社会全体の理解と協力を得ることを目指している。コンソーシアムは2023年3月に設立され、これまでに3回の発表会が開催されており、研究者による最新の調査結果の報告や、気候変動への適応策に関する意見交換が行われてきた。
今後も定期的に発表会を開催し、最新の研究成果を共有していく予定だが、一般者の参加も可能、より多くの人々が国立公園の保全に関心を持つきっかけになることが期待されている。
気候変動の影響は今後も避けられないが、科学的知見を活用した適応策によって、生物多様性の損失を最小限に抑えることは可能だ。中部山岳国立公園における取り組みは、日本各地の自然保護の新たなモデルケースとなるべきだ。

中部山岳国立公園「生物多様性保全コンソーシアム」
■開催日時:2月27日(木)13時~17時 (予定 終了時刻は変動する可能性があります)
※コンソーシアムの様子はオンラインでも配信を予定
■開催場所:富山大学五福キャンパス 共通教育棟 C11教室/〒930-8555富山県富山市五福3190
■調査・研究報告予定者(分野):※発表予定順
・新潟大学 奈良間千之氏(氷雪)
・筑波大学山岳科学センター菅平高原実験所 田中健太氏(生態系)
・国立科学博物館 筑波実験植物園 村井良徳氏(植物)
・富山県立山カルデラ砂防博物館 杉田久志氏(植物)
・富山県立山カルデラ砂防博物館 福井幸太郎氏 ほか(氷雪)
・富山大学 清水大輔氏(昆虫)
・富山大学 澤越美幸氏(鳥類)
・信州大学 東城幸治氏(生物多様性)
・信州大学 金子滉克氏(気象)
・信州大学 長原衣麻氏(動物)
※発表の順番は変わる可能性があります。
■傍聴について:
一般の方の傍聴(オンライン傍聴含む)も受け付けております。傍聴を希望される方は、氏名、傍聴方法(会場またはオンライン)、所属、連絡先(メールアドレス)を明記のうえ、下記申込先まで電子メールにてお申し込みください。
オンライン傍聴を希望された方には後日傍聴用のURLを電子メールにてお送りさせていただきます。会場での傍聴につきましては上限を160人、オンライン傍聴につきましては上限を500人とさせていただきます。上限に達した後にお申込みがあった場合にはその旨、随時、メールにて回答させていただきます。
■申込受付期限(必着):2月26日(水)12時
※傍聴は無料です。
※録画映像への写り込みがあり得るため、あらかじめご承知おきください。
■取材について
取材を希望される方は、氏名、所属を明記のうえ、下記まで電子メールにてお申し込みください。会場の都合により、取材スペースを十分に確保できない可能性がありますこと、あらかじめご承知おきください。
【申込受付期限(必着):2月26日(水)12時】
※取材・撮影・傍聴等に関しては、進行の妨げとならないよう係員の指示に従ってください。
■お問い合わせ・お申込先:中部山岳国立公園管理事務所:担当 竹形
E-mail:NCO-MATSUMOTO@env.go.jp
直通:0263-94-2024

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