木造高層ビルの実現を可能にした立役者が、建築用木材CLT(直交集成板:Cross Laminated Timber)である。CLTは、木材を繊維方向が交互になるよう積層・接着したパネルであり、強度と耐久性を兼ね備えている。日本では2013年から一般利用が始まり、2025年開催の国際博覧会「日本館」でも採用されるなど、今後さらなる普及が期待されている。

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高い耐火性と耐震性、断熱性と調湿機能で快適な室内環境を実現するCLT。

木造建築は火災に弱いというイメージがあるが、実際のCLTは耐火性能が高い。木材の燃焼速度は毎分約1mmであり、厚さ90mmのCLTパネルなら1時間以上耐えることができる。さらに、表面が炭化すると酸素供給が遮断され、燃え広がりを防ぐ「燃えどまり」現象が発生し、建物の構造体としての強度を一定程度維持できる。
耐震性の面でも、CLTを使用した建築物は阪神淡路大震災の観測波よりも大きな力を加えても倒壊しないことが実験で確認されている。従来の木造軸組工法とは異なり、面で支える構造を採用することで耐力壁を増やし、高い耐震性を実現している。
またCLTは鉄筋コンクリートと比較して重量が約1/5と軽量であるため、建設時のコスト削減につながる。例えば、鉄筋コンクリート造の3階建てと同じ重量で、CLTなら5階建てを建設可能だ。また、コンクリートのように養生期間が不要なため、工期短縮が可能であり、早期入居・利用開始が実現しやすい。
木材の持つ断熱性と調湿機能により、CLT建築は快適な室内環境を提供する。木材は外気温の影響を受けにくく、鉄やコンクリートに比べて熱伝導率が低いため、室内の温度を一定に保ちやすい。さらに、木材の調湿機能が湿度を調整し、カビや結露を抑える効果が期待される。

CLTの活用が森林資源の有効活用につながる

木造建築の普及は、森林資源の有効活用にも貢献する。木材はCO2を吸収し貯蔵する性質を持ち、建築物として利用することで長期間にわたり炭素を固定できる。さらに、間伐材やB材などの未利用木材もCLTとして活用できるため、国産材の有効利用にもつながる。
CLTの普及には、運送コストの削減と認知度向上が課題とされている。国内にはCLT加工工場が限られており、輸送費がかさむため、製造拠点の増加が求められている。また、価格面では、現在の1㎥あたり10万円というコストを7万円程度まで引き下げることが望まれている。
一方で、国はCLTを活用した建築物への補助制度を設け、支援を強化している。規格品の製造によるコスト削減や全国的な普及促進により、今後さらなる市場拡大が期待されている。
CLT建築の増加により、オフィスや学校、医療施設など幅広い用途での活用が進むと考えられている。木質空間はリラックス効果をもたらし、業務効率の向上や人間関係の円滑化にも寄与する。今後も木造建築の持つ環境性能や快適性を活かし、新たな価値を提供していくことが期待される。

令和6年度「CLT関連林野庁事業成果報告会+CLT DESIGN AWARD 2024- 設計コンテスト- 表彰式」開催

そんなCLTの普及を推進している一般社団法人日本CLT協会は、2025年3月7日(金)、林野庁の補助事業として実施された9つのCLT関連プロジェクトの成果を発表する「令和6年度 CLT関連林野庁事業成果報告会」を開催する。また同日、「CLT DESIGN AWARD 2024-設計コンテスト-表彰式」も行われる。
今回のコンテスト募集テーマは「地域の交流場となる図書館」。全国から寄せられた応募総数139作品の中から選ばれた優れた作品が表彰される。最新のCLTに関する研究と開発の動向に触れつつ、CLT建築のインスピレーションを得る絶好の機会になるだろう。

【開催概要】
日時:2025年3月7日(金) 13:00~17:00(開場 12:30)
会場:木材会館(東京都江東区新木場1-18-8) & オンライン配信(ハイブリッド開催)
定員:会場 50名 / オンライン 500名
参加費:無料(事前申込制)
プログラム:
第一部(13:00~14:10):CLT DESIGN AWARD 2024 -設計コンテスト-表彰式
第二部(14:30~17:00):CLT関連林野庁事業成果報告会
申込受付期間:2025年2⽉5⽇(水)〜3⽉4⽇(火)

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