2025年2月21日、経済産業大臣は二酸化炭素の貯留事業に関する法律(CCS事業法)に基づき、北海道苫小牧市沖の一部区域を特定区域として指定した。これにより、同区域における試掘の許可申請の受付が開始された。CCS事業法に基づく特定区域の指定は今回が初となる。

CCS事業法とは?

CCS(Carbon Capture and Storage)は、二酸化炭素(CO2)を回収し、地下の貯留層に長期的に貯蔵する技術であり、脱炭素社会の実現に向けた重要な施策の一つである。2024年11月に施行されたCCS事業法では、貯留層の存在が認められる区域について、公共の利益の増進を目的として試掘が必要と判断される場合、経済産業大臣が特定区域に指定することが可能となった。
今回、北海道苫小牧市沖の一部区域が特定区域に指定されたことで、試掘の許可申請が正式に受け付けられることとなった。今後、CCS事業法の基準に基づいた審査が行われ、試掘の許可が判断される。

苫小牧市沖が選定された背景

苫小牧市沖は、2019年までに約30万トンのCO2を圧入した日本初の大規模CCS実証試験が実施された地域である。さらに、エネルギー基本計画やGX2040ビジョンに基づき、2030年からの本格的なCCS事業開始を目指しており、これまでの知見を活かした貯留事業が展開される見込みだ。
また、2024年5月にはCCS事業法が成立し、貯留事業の許可制度が整備されたことから、CCS事業を推進するための環境が整いつつある。今後、試掘の結果をもとに、本格的な貯留プロジェクトの実施が検討されることとなる。

今後の展望

特定区域の指定により、試掘許可申請の受付が開始されたが、実際の事業化には複数の段階を経る必要がある。許可申請の審査過程では、関係都道府県知事との協議や利害関係者の意見募集が行われ、慎重に進められることとなる。
日本国内におけるCCSの普及を加速させるためには、技術的な課題の解決や規制の整備が求められる。特に、貯留層の安全性や長期的な監視体制の確立が重要なテーマとなるだろう。今後、政府や関連機関による支援のもと、CCS技術の実装が進むことで、脱炭素社会の実現に向けた大きな一歩となることが期待される。