NHK Eテレの人気番組「デザインあneo」の世界観を空間化した展覧会『デザインあ展neo』が、2025年4月18日から虎ノ門ヒルズのTOKYO NODEで開催中だ。全国116万人を動員した前回の展覧会から約4年、今度のテーマは「モノ」から「動詞」へ。会期は過去最長の5か月間、巡回予定はない。こどもたちの感性を刺激する“あそびの知”が、東京の中心で躍動している。

「あるく」「すわる」「たべる」、日常の動詞が、デザインの入り口になる
『デザインあ展neo』は、NHKとNHKエデュケーショナル、NHKプロモーション、TOKYO NODEの共同主催で、2025年4月18日から虎ノ門ヒルズ ステーションタワー45階の「TOKYO NODE GALLERY」でスタートした。会場は高さ15メートル超、約1,500平米のスケールを誇り、都心の摩天楼の中で“感じるデザイン”が体現されている。



今回の展覧会で焦点を当てたのは、「動詞」=人の行為そのものである。「あるく」「たべる」「すわる」「もつ」など、日常の中で無意識に繰り返される行為が、観察・考察・体験という三層構造で再定義される。
例えば「あるきかたログ」では、体験者が指定されたポーズをカメラの前でとることで、その動きが“パラパラ漫画”のようにつながり、歩くという行為の構造が可視化される。巨大な箸に“つままれる”感覚を疑似体験できる「たべられるきもち」や、無数の“もち手”に囲まれる「もちてのむれ」なども、参加者に身体的インパクトと知的発見をもたらす。
360度の映像空間「DO IT!」では、映像と身体が交差し、参加者自身が“動詞”の一部になる。これは単なるアートでも知育でもない、感覚と論理が交錯する“設計された体験”だ。現代のこどもたちにとって、「考えること」そのものが遊びであるという前提に立った展示構成は、教育やアートのあり方そのものを問い直している。



“あ”からはじまる、未来の感性教育。『デザインあ展neo』が提示する、思考するデザイン体験とは?
展覧会を支えるクリエイター陣も注目に値する。総合ディレクターはグラフィックデザイン界の重鎮・佐藤卓。映像には中村勇吾、音楽には蓮沼執太といった第一線の表現者たちが名を連ねる。佐藤は「日常にある行為こそが、すでにデザインの一部である」と語り、デザインが一部の専門家に閉ざされたものではないことを体現する。
また「デザインあ展neo」は展覧会にとどまらず、会場を出た虎ノ門ヒルズの街全体が「動詞の舞台」になっている点も興味深い。駅からの動線には「まがる」「のぼる」「すすむ」などの動詞が配され、ビル内レストランでは「のせる」「たべる」をテーマにしたコラボメニューが提供される。週末のT-MARKETでは「ぬりえ」や「バルーン」など、親子で楽しめる連動企画も展開されている。特設ショップでは蓮沼執太によるアナログレコードや、展覧会オリジナルグッズも販売されており、「デザインあ」の世界観を持ち帰ることも可能だ。
展覧会は9月23日まで。国内巡回の予定はなく、TOKYO NODEのみでの開催となる。“こどもをこども扱いしない”というポリシーのもと、子どもも大人もフラットに参加できるこの空間は、まさに次世代の感性を刺激する「動詞の装置」。
社会の変化と共に、「思考する力」が新たな価値になる今、デザインの本質を問うこの試みは、都市における文化活動のあり方に静かだが深い問いを投げかけている。