大成建設株式会社は、長年培ってきた土壌微生物評価や緑化技術を応用し、耕作放棄地となっていた水田を畑地として再生する農地再生技術の開発に成功した。2024年度から栽培試験を開始した枝豆では、初年度から標準的な収穫量を確保。本技術は地域の農業法人などへの展開が期待されており、持続可能な地域循環型社会の構築への貢献が見込まれている。

耕作放棄地の水田を畑地化する農地再生とは?
水田の畑地化による農業団地構想実現と地域資源の循環利用。
日本各地で農業従事者の減少による耕作放棄地の増加が深刻化している。このような背景から、各地の自治体では農地の大規模集約と民間企業や農業法人の参入による農業団地構想が進められている。しかし、低平地に多い水田を畑地として活用するには、冠水防止のための嵩上げが不可欠であり、これまで大規模な農地造成と収益性の確保を両立する技術は確立されていなかった。
大成建設はこの課題に対し、地域資源を有効活用する持続可能な農地再生技術の開発に着手した。埼玉県羽生市の農業団地「羽生チャレンジファーム ※1」内の「イノベーションラボ ※2」で、地域建設現場から発生する土砂を活用して水田を嵩上げ。さらに微生物による土壌浄化や緑化植物の栽培技術を組み合わせた結果、初年度から枝豆の安定的な収穫を実現した。
また、食品廃棄物や下水汚泥から製造されるリサイクル肥料を活用することで、地域内での資源循環サイクルの構築にも成功している。これにより、単なる農地再生にとどまらず、地域資源の循環利用による持続可能な社会モデルを提案。大成建設はこの技術を他地域にも展開することを目指しており、地方創生への貢献も期待されている。
大成建設は今後、農地再生だけでなく、地域の農作物を活用した食品工場や観光施設の整備による「農業の6次産業化」の推進も視野に入れているとしている。これにより、農業の生産、加工、販売までを地域内で完結させ、農業所得の向上と地域経済の活性化を図る構想だ。
※1 羽生チャレンジファーム
埼玉県羽生市が平成30年に計画した農業団地構想であり、2024年12月現在、約24haの計画地の約半分の面積で水田が畑地化され、民間企業が参入して営農を実施している。(株)アグリメディアが民間企業に農地を斡旋する代行業務を羽生市から受託して実施している。
※2 イノベーションラボ
(株)アグリメディアが羽生チャレンジファーム内に開設した、「人と人、人と技術をつなぐ未来農業・創造プレイス」をコンセプトとして研究開発を行うために造成した農地、①儲かる栽培方式を確立する場、②企業と最先端技術の共同研究を行う場、③高度な農業人材を研修する場、の提供を目的としている。
