生物多様性や自然資本への配慮が企業経営に求められる今、再生型農業や小規模農家の支援は、単なるCSRではなく、調達戦略の根幹を成すテーマとなりつつある。一般社団法人ソリダリダード・ジャパンは、2025年5月29日に「ネイチャーポジティブ:自然を基盤とした解決策の最前線」と題したウェビナーを開催する。小農支援、温室効果ガス(GHG)削減、生態系再生の実践例が語られる本イベントには、CIジャパンや地球環境戦略機関などが登壇予定。

現場主導の取り組みと連携が鍵。企業は「ネイチャーポジティブ経営」にどう向き合うべきか。

気候変動対策と並び、自然資本や人権への配慮が企業の経営課題として急浮上している。特に2023年に公表されたTNFD(自然関連財務情報開示タスクフォース)の最終提言は、企業に対し、自然への影響と依存の把握・開示を求める内容となっており、サステナビリティ経営の再構築を促している。
こうした潮流を受け、ソリダリダード・ジャパンは5月29日に無料ウェビナーを開催する。「再生型農業」「小農支援」「GHG削減」を軸に、企業がネイチャーポジティブ経営にいかに取り組めるかを問う内容で、CIジャパンの松本由利子氏、IGES主任研究員の藤崎泰治氏、LA-Lab代表の藤原啓一郎氏が登壇する。
登壇者の一人である松本氏は、CI(コンサベーション・インターナショナル)とファッション大手ケリングが共同設立した「Regenerative Fund for Nature」の取り組みを紹介する予定。同基金は、再生型牧畜を通じて革素材の原料生産を支援し、生態系回復と持続可能な調達を両立させる構想を掲げている。
一方、ソリダリダードがラテンアメリカやインドで展開する再生型農業支援も注目される。日陰栽培や土壌改良を取り入れた小農支援モデルにより、森林破壊を抑えながら農家の収益性も向上させるという。世界の農業生産者の84%を占める小規模農家は、森林減少の要因であると同時に、再生の担い手にもなり得る。制度だけでは対応しきれない現地の社会的・生態学的課題に対し、企業がどのように関与できるかが問われている。
日本企業の多くは間接調達が主流であるため、生産地との距離が遠く、サプライチェーン上流との対話や支援の具体化が難しい現実もある。そのような中、本ウェビナーは現場の事例を通じて、企業にとっての「次の一手」を模索する機会となる。
Scope3排出削減の手段としても、再生型農業は注目を集める。農地の炭素吸収力を高め、生物多様性を保全するこうした取り組みは、経済合理性と環境再生を両立させる選択肢として評価されている。
ネイチャーポジティブ経営とは、自然を消費する経営から、自然を再生する経営への転換を意味する。本ウェビナーでは、その可能性と現実の距離を測る具体的な知見が共有される。
地球規模の規制や基準が変化する中、企業には一過性の対応ではなく、生産地との長期的な関係構築と理解が求められる。再生型農業の普及と小農支援の強化は、その第一歩となる。ネイチャーポジティブという言葉が単なる理念に終わらず、事業活動の本質に組み込まれる時代が始まりつつある。

【ウェビナー概要】
ネイチャーポジティブ:自然を基盤とした解決策の最前線 ~再生型農業・小農支援・GHG削減~
開催日時:2025年5月29日(木)16:00〜17:20
開催形式:Zoomウェビナー(事前登録制)
参加費:無料
定員:200名
主催:一般社団法人ソリダリダード・ジャパン
登壇者:
松本 由利子 氏(CIジャパン)
藤崎 泰治 氏(地球環境戦略機関(IGES)主任研究員)
藤原 啓一郎 氏(LA-Lab代表/東北大学ネイチャーポジティブ拠点客員教授)

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