大和ハウス工業株式会社は、2025年6月から、商業施設や事業施設といった非住宅建築における木造設計業務において、BIM(Building Information Modeling)対応を本格的に開始した。BIMの導入によって、木造建築の設計精度と効率を飛躍的に向上させ、脱炭素社会の実現と建設業界のDX(デジタルトランスフォーメーション)を同時に推進する狙いだ。

「Future with Wood」、戦略とBIMの融合がもたらす新しい木造建築の姿。

国が掲げる「2050年カーボンニュートラル」に呼応し、非住宅分野における木材利用が急速に広がりを見せている。こうした社会的要請に応えるかたちで、大和ハウス工業は、2023年に木造・木質化を推進するプロジェクト「Future with Wood(FWW)」を発足。2025年4月には専門部署「Future with Wood推進部」も新設し、企業としての本格的な木造建築シフトを打ち出した。
その流れの中で今回、同社は建設・製造業向けITソリューションを手がける応用技術株式会社と連携し、BIMツール「D-Rex」に加え、Autodesk® Revit®の拡張ツール「BooT.one®」を組み合わせた設計環境を構築した。これにより、木造建築に必要な構造設計や耐火性能、部材積算、施工シミュレーション、省エネ効果の試算まで、すべてをBIM上で一括管理することが可能となる。
特筆すべきは、同社が長年蓄積してきた鉄骨造・RC造のBIMデータ資産をベースに、木造建築向けの設計ロジックと自動生成機能を融合した点にある。これにより、木造特有の構造材や耐火被覆といった複雑な設計要素も高精度かつ短時間で処理できるようになった。
2026年春には国土交通省が建築確認申請のBIM審査制度を開始する予定で、大和ハウス工業の取組はそれに先行するものとして業界からも注目を集めている。従来、BIMは主にRCやS造の大型施設で活用されてきたが、大和ハウス工業はその技術を木造建築にも展開。木造の高層・大規模化に向けた礎を築きつつある。
今後は、建築資材の製造から施工段階、さらには建物の運用フェーズにおけるエネルギー効率やCO2排出量の可視化も進め、木造建築を通じた環境貢献をより深化させていく構えだ。BIMを軸とした建設DXの推進と「木とともにある未来」の実現、その両立を掲げる同社の挑戦が、建築の常識を変えつつある。

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