大成建設が、従来曖昧だった「木質建築」の定義と分類を独自に策定し、都市建築における標準形を示すコンセプトモデルを構築している。木材使用量や構造的特徴、環境貢献度を基にした7種類のスタイルによって、建築関係者間の共通理解を促進し、カーボンニュートラルとウェルビーイングの両立を実現する、新たな都市建築“ビルモク”時代の幕開けを告げる内容だ。

木質建築の“定義”を可視化し、都市建築に木を取り戻すプロセスと大成建設。
近年、建築分野でもカーボンニュートラル実現に向けた取り組みが加速している。CO2を吸収・固定化する木材を積極的に構造材に用いる「木質建築」への関心は高まる一方だったが、これまでその定義は極めて曖昧だった。鉄骨造やRC造のような明確な分類が存在しないため、「木質建築」と聞いても、木の使用割合や構造規模、導入効果などの具体像が掴めず、顧客と設計者のあいだでイメージにずれが生じ、合意形成の障害となってきた。
こうした課題を踏まえ、大成建設は木質建築の導入を加速させるための独自の指標として、「木材使用量」「構造」「環境貢献度」などを軸にした7種類の木質建築スタイル分類表(ビルモクラインナップ)を構築。この分類に基づき、都市における木質建築の標準的形態を具体的に示すコンセプトモデルを作成した。これにより、プロジェクト初期段階から木質建築の特徴やコストを具体的に共有できるようになり、顧客の意思決定を大幅に円滑化する。
分類表では、木質構造建築と木質仕上建築を含む7つの主要タイプが定義され、それぞれの特徴を「木材の利用度合い」「構造的役割」「CO2削減効果」といった観点から整理。これにより、建築用途に応じた木質化の可能性が見えやすくなり、オフィスビルや商業施設、学校や病院といった多様な施設への導入を後押しする。
加えて、大成建設はこの分類表に基づいて、都市部における実装を想定した“標準的な木質建築モデル”を視覚的に表現した。さらにこのコンセプトモデルから、現実のプロジェクトに応用できるようコスト配慮型の派生モデルも提示している。これにより、「木質建築=高コスト」といった先入観の払拭にもつながる。
木材は、心理的な安らぎや快適性をもたらす素材でもある。温もりある空間が人々のウェルビーイングを高め、働く場や学ぶ場、暮らす場において利用者の満足度を向上させる効果も期待されている。今回の分類表とモデルによって、木質建築の導入が単なる環境施策ではなく、企業や施設の“価値向上策”としても有効であることが、より具体的に理解されるようになるだろう。
今後、大成建設はこの分類表とコンセプトモデルを活用し、顧客の建築資産に新たな価値をもたらす木質化ソリューションを展開していく。脱炭素とウェルビーイングの両立を掲げる“ビルモクの時代”において、木は都市建築の主役として脚光を浴びるだろう。

木材を使った建築が、2タイプ7スタイルの木質建築に整理分類されている。