東北大学と日東紡績(Nittobo)の共同研究チームは、リサイクルが容易な新しい電池の電極材料を開発した。水に溶けやすい高分子に電荷を蓄える化合物を組み合わせることで、安全で環境に優しい「水系電池」への応用を可能にした。使用後は100℃以下の温和な条件で原料に分解でき、電池のリサイクル性に革命をもたらす可能性がある。

水に溶ける高分子が鍵、安全な「水系電池」への応用。

次世代電池の電極材料として注目される「有機レドックス高分子」は、多くが水に溶けにくく、安全性の高い「水系電池」への応用が難しかった。研究チームは、水に溶かすとプラスの電荷を帯びる「ポリアミン」という高分子に着目。これに、高い電荷貯蔵能力を持つ「p-ジヒドロキシベンゼン」を簡便な化学反応で結合させ、高い親水性を保ったまま電極材料として機能する新しい高分子の開発に成功した。

100℃以下で原料に分解、容易なリサイクルを実現。

従来の電池材料は、他の高分子材料と同様に分解が難しく、リサイクルが大きな課題だった。しかし、今回開発した高分子は、100℃以下の温和な条件で加熱すると、元の原料である「ポリアミン」と「p-ジヒドロキシベンゼン」に分解できることを実証した。これにより、使用済み電池から貴重な資源を容易に回収し、再利用する道が拓ける。これは、資源の制約や廃棄物問題を抱える電池産業において、画期的なブレークスルーとなる。

脱炭素社会の実現に貢献。

リチウムイオン電池などに使われるレアメタルの価格高騰や地政学リスクが懸念される中、今回の研究成果は、資源の制約を受けにくい持続可能な電池開発に新たな光を当てるもの。リサイクルが簡単な水系電池が実用化されれば、脱炭素社会の実現に大きく貢献することが期待される。この成果は、高分子科学の専門誌「Polymer Journal」にも掲載された。

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