パルファン・クリスチャン・ディオールは、WWF(世界自然保護基金)とのパートナーシップを拡大し、フランスのオオヤマネコ、メキシコのジャガーに続く第3弾として、チリに生息するピューマの保護に取り組む。生息地のマッピングや個体数の記録、生態回廊の整備、地域社会への教育、衝突低減設備の導入などを通じ、2030年までにナウエルブタ山脈の中心部で最大5万ヘクタールにわたる安全な生息地の再生を目指す。

生息地の再接続と地域共存で、ピューマ保護と生物多様性回復を加速。
ピューマは、生態系のバランスを保つ上で重要な役割を担うネコ科の捕食者だ。風景に溶け込む高い隠密性と俊敏さ、カリスマ性に満ちた存在感は、人々を魅了し続けてきた。一方で、過去200年の間に個体数は減少し、世界全体で5万頭以下との報告もある。背景には人間活動による生息地の分断や、家畜を脅かす存在と見なされ駆除されてきた歴史がある。


こうした課題に対し、ディオールとWWFは、科学的なモニタリングと地域社会との協働を両輪に据えた長期プロジェクトで臨む。本プロジェクトでは、対象地域の生態学的価値を可視化するマッピングと個体群の記録を起点に、断片化した生息地をつなぎ直す生態回廊(エコロジカル・コリドー)の設計・整備を実施。加えて、人間とネコ科動物の衝突(家畜被害など)を抑えるための設備提供や、地域住民を対象とした教育・啓発を展開し、保全と生活の両立を図る。WWFチリの現地チームは、個体への直接的な接触や干渉を避けつつ、映像記録を通じて野生の営みを捉え、保全の意義を社会へ伝える取り組みも進めている。
ディオールは、LVMHグループの環境戦略「LIFE 360」における中核ブランドとして、生物多様性の再生にコミットしている。グループが掲げる「2030年までに動植物の生息地500万ヘクタールの再生」という共通目標に沿い、WWFとの地域連携を具体的な保全アクションへと落とし込むかたちだ。自然の美しさと多様性への影響を最小化するというグループの方針とも整合し、香りや美の領域で培ったブランドの発信力を、地球規模の課題解決へ接続していく。
今回のチリ・ナウエルブタ山脈での取り組みは、ピューマという象徴種の保護を通じて、手つかずの自然が広がる真の野生生息地の再生につながると期待される。生息地の再接続はピューマのみならず、そこに暮らす多様な動植物の回復にも波及効果をもたらす。ディオールとWWFは、科学的根拠に基づく保全と地域の暮らしの調和を重視しながら、2030年に向けて段階的に成果を積み上げていく考えだ。今後も、映像や発信を通じてプロジェクトの進捗を広く共有し、共存への理解と参加の輪を広げていくとしている。
