2025年大阪・関西万博で注目されるのは、展示物だけではない。数々のパビリオン建築に採用された膜構造建築、その背後にある存在が佐賀県多久市に本社を構える山口産業株式会社だ。同社は、軽量で高いデザイン性と施工性を誇る「膜構造」によって、万博の未来的な景観と持続可能性の実現に大きく寄与している。

クウェートパビリオン「砂漠を飛ぶ空飛ぶじゅうたん」のような、非常に柔らかく、流れるような美しい曲面デザインを膜構造が実現。

万博を彩る多国籍パビリオン建築、陰で支えたのは地方の技術力。

「いのち輝く未来社会のデザイン」をテーマに掲げる2025年大阪・関西万博では、世界各国のパビリオンが次々と個性を競い合うように建設されている。その建築群において、構造と美観を両立し、環境負荷の低減にも貢献する存在として脚光を浴びているのが「膜構造建築」だ。
この領域でひときわ存在感を放つのが、佐賀県多久市の山口産業株式会社だ。同社は1972年に創業以来、膜構造の専門企業として設計・製造・施工の全工程を一貫して手がけ、数多くの実績を積み上げてきた。万博においては、クウェート、バーレーン、韓国、イタリア、日本、NTT、モビリティエクスペリエンスといった多国籍パビリオンに貢献。複雑な曲線を描く意匠的構造や、木造との融合、大空間の実現など、膜構造ならではの柔軟性と機能性を駆使して応えている。
特にクウェート館では、「空飛ぶじゅうたん」を彷彿とさせる浮遊感ある曲面デザインを実現。バーレーン館では木造に膜を融合させ、軽やかで空間的な開放感を生み出した。韓国館では透明感のあるファサードが印象的な外観を構成し、イタリア館ではメッシュ膜が建物の美しさを引き立てた。こうした空間表現は、デザイン性だけでなく施工の効率性や環境性能でも優れた結果を出しており、膜構造が未来の建築の鍵となることを示唆している。

バーレーンパビリオン 木造建築物に膜構造を取り付けることで、軽量かつデザイン性の高い空間を実現している。
韓国パビリオン パビリオンの側面に膜構造のファサードを設置し、軽やかで透明感のある壁面が空と調和する重要な要素となっている。
イタリアパビリオン イタリアのメッシュ膜を活かした優美なファサードデザインは、「美」をテーマにしたイタリア館の空間表現と調和している。

タイトな工期と高難度設計を乗り越えた「万博PJチーム」の総合力。

万博プロジェクトでは、公共工事に匹敵するほどの高精度とスピードが求められる。特にクウェート館のような三次元の曲面構造、インド館での海外規格鋼材との調整、NTT施設の屋根膜設置といった業務は、極めて高い設計・施工技術を要求されるものであった。
山口産業は「万博PJチーム」と名づけた社内横断的組織を結成。設計、調達、製造、営業が密に連携し、早期の情報共有と迅速な意思決定で課題に対応した。この体制により、山口産業は「想像を超える成果」を現実のものとした。またこの経験を通じて、山口産業は単なる建設会社ではなく、未来社会におけるインフラデザインとサステナビリティを同時に支える「社会実装のプレイヤー」としての立場を明確にしている。

「WRAP THE FUTURE」──膜構造建築が導く持続可能な社会と地域の成長力。

膜構造は、軽量で地震に強く、短納期で建築自由度が高い。その上、採光性が高く照明エネルギーを抑制できるなど、環境負荷の低減にも資する。山口産業は、こうした構造特性が低炭素社会の形成に資するものと捉え、自社のビジョンに「WRAP THE FUTURE(未来を包み、守り、進む)」を掲げている。
この取り組みは、建築分野の技術革新のみならず、地方の雇用創出や人材育成にも波及効果をもたらしている。地方で培われたものづくりの技術が、世界規模のプロジェクトで花開いた今回の実績は、佐賀のみならず全国の中小企業にとって新たな希望と言えるのではないだろうか。

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