一般社団法人日本トイレ協会は2025年11月10日、東京都港区の機械振興会館で「第41回全国トイレシンポジウム」を開催する。基調講演に国土交通省道路局の小山健一さん、中央大学の秋山哲男さんを迎え、鉄道・空港・高速道路・道の駅など交通インフラのトイレをめぐる混雑・行列問題に本格的に切り込む。会場・オンライン併催、参加費無料。UDトーク字幕と手話通訳も実施し、議論の裾野を広げる。

混雑の構造を可視化し、設計・運用・行動変容を同時に更新する。

清潔さや設備面の向上が進んだ一方で、交通結節点のトイレはピーク時の行列が常態化している。女性トイレに偏る待機列、多機能トイレの目的外利用、時帯別需要と器具数のアンバランスなど、課題は個別ではなく構造だ。本シンポジウムは、その構造を「データ」「設計」「運用」「利用者行動」のレイヤーで分解し、再設計へと踏み出す一日となる。
企画セッション1では、「交通インフラのトイレはなぜ混雑するのか?」をテーマに、需要の偏りと供給設計のミスマッチを多角的に検証する。ジェンダー差を踏まえた個室配分、回転率に影響する器具仕様、ベビールームや多機能トイレの動線設計とルール整備、観光やイベントによる突発需要の扱いまで、現場データと運用の実情を突き合わせる。
企画セッション2は「行列をなくすにはどうすれば?」が焦点だ。AIによる混雑予測とダイナミックサイネージでの誘導、時帯に応じた個室の可変運用、清掃・補充のオンデマンド化、キャッシュレス入場制御の可能性、誰もが使いやすいユニバーサル設計の更新など、ハード・ソフトの両面から実装可能な解を洗い出す。SNSで議題化を牽引するインフルエンサーと、所管官庁・事業者の現場知を交差させ、利用者の“本音”と制度・運用の現実を同じテーブルに載せる構図が特徴だ。
会場は機械振興会館地下2階多目的ホール。定員240名の会場参加に加え、オンライン配信で人数制限なく受講できる。テーマは「すべての人に優しい鉄道・空港・高速道路・道の駅などのトイレを考える」。CPD認定も申請中で、設計・土木・設備の専門家にとっても実務的な学びの機会になるだろう。申し込みは専用サイトで受け付け、情報保障としてUDトーク字幕と手話通訳を標準提供する。
混雑は“マナー”では解決しない。必要なのは、需要の予測と分散、器具配分と動線の最適化、ルールの明確化、そして誰もが迷わず使える案内と空間だ。本シンポジウムは、日常の苛立ちの共有に終わらせず、仕様書と運用のアップデートへつなげる場を目指す。列が消える移動インフラは、決して夢物語ではない。設計・運用・行動の同時刷新ができるかどうか、その答えを“行列ゼロ”の未来像とともに提示する一日になる。

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