★ここが重要!

★要点
那須高原サンタクロース村の一員「ホテル フォレストヒルズ那須」で、サンタクロース国際交流協会認定の“本物のサンタ”が、愛犬の部屋を訪ねてプレゼントと「よい子の証明書」を手渡す日本初の企画が行われる。犬を「家族」として迎える時代に、単なるクリスマス演出ではなく、「動物と人が共に幸せに暮らせる社会」を体験として可視化する試みだ。
★背景
少子化と単身世帯の増加の中で、犬や猫を家族として迎える世帯は珍しくなくなった。一方で、長時間の留守番や環境負荷、マナー問題など、ペットとの共生には社会的な課題も付きまとう。那須高原サンタクロース村を育ててきたNPO法人エコサンタと、with Dogs clubの連携は、観光・地域ブランド・動物福祉・環境教育を束ねる“新しいクリスマスのかたち”を模索する動きと言える。

“本物のサンタクロース”は、今年、日本の犬たちのもとにもやって来る。しかも、プレゼントを受け取るのは子どもではなく、家族の一員として暮らす愛犬だ。
栃木県・那須高原のリゾートホテル「フォレストヒルズ那須」で行われる「本物のサンタが愛犬に幸せを届けるクリスマス体験」は、with Dogs clubとNPO法人エコサンタによる日本初の試みだ。
犬と人がどう関わり、地域とどうつながるのか。クリスマスという祝祭のフォーマットに、“共生”と“持続可能な未来”を織り込む実験である。

本物のサンタがノックする。犬のための「よい子の証明書」

舞台は、那須高原の森に囲まれた「ホテル フォレストヒルズ那須」。全コテージにプライベートドッグランを備え、愛犬と泊まれるリゾートとして知られるホテルだ。
2025年12月17日から25日までの期間中、宿泊中の客室にサンタクロース国際交流協会認定のサンタクロースが訪ねてくる。サンタは愛犬の名前を呼び、優しく語りかけながら、世界に一つだけの「よい子の証明書」とプレゼントを手渡す。
主役はあくまで犬であり、人はその時間を“同伴者”として見守る立場になる。写真を撮るもよし、ただ静かにその光景を見つめるもよし。家族の一員として日々をともにしてきた存在が、正式に「よい子」と認められる儀式は、飼い主にとっても心の節目になる。
このプログラムを仕掛けるのが、愛犬との共生社会をめざす with Dogs club と、那須高原サンタクロース村を育ててきたNPO法人エコサンタだ。サンタクロースという「物語の力」を借りて、犬と人の関係にそっと新しい意味づけを差し込む構図である。

サンタクロース国際交流協会認定のサンタクロース

ペットは「家族」になった。その先に見えてくる責任

日本では、犬や猫を子どものように扱う「ペットは家族」という言葉が一般化した。SNSを開けば、犬用のバースデーケーキ、記念撮影、ペット同伴OKのカフェやホテルの情報が流れてくる。
一方で、現実には長時間の留守番や運動不足、しつけ不足によるトラブルなど、犬側の視点から見れば“しんどい日常”も多い。北欧の一部の国では、犬を長時間ひとりきりにしないことを法で定め、犬の保育園やシッターなどのサービスが普及している例もある。
with Dogs club が掲げる「愛犬と一緒に、もっと自由に、もっと楽しく」という言葉は、単なるスローガンではなく、こうしたギャップを埋めるための宣言に近い。宿泊施設や観光地、企業と連携し、「犬と一緒に快適に過ごせる場」を地域の中に増やしていくことは、犬を“飼う”社会から“共に生きる”社会へ、価値観をアップデートする行為でもある。
今回の“サンタ体験”は、その象徴的な一歩だ。「かわいい」「映える」を入口にしながら、「この犬がこの家族と、これからも安心して暮らしていける社会とは何か」という問いを、飼い主の胸にじわっと残す仕掛けでもある。

那須高原サンタクロース村という地域ブランド——観光×環境×物語

NPO法人エコサンタは、那須町の「フィンランドの森」を拠点に、サンタクロース文化を軸とした地域活動を続けてきた団体だ。子どもたちに自然とふれあう体験や文化体験を提供しつつ、環境教育や国際交流、まちづくりの推進に取り組んできた。
やがて、その活動は「那須高原サンタクロース村」という地域ブランドへと育っていく。サンタは単なる“商業イベントのキャラクター”ではなく、「やさしさ」「つながり」「持続可能な未来」を象徴する存在として位置づけられた。
近年、日本各地で「観光」と「サステナビリティ」を両立させようとする動きが広がる。国立公園で環境負荷の低い宿泊モデルを展開する事業者も現れ、地方創生とエコツーリズムを両立させる試みが進んでいる。
那須高原サンタクロース村の取り組みも、その流れに連なる。サンタと北欧文化、森の風景という“物語性”を活かしながら、地域のホテルや企業、NPOが連携することで、単なる集客イベントを越えた「地域の物語」を紡いでいる。今回の犬向けサンタイベントは、その物語に「動物福祉」と「ペット共生」という新しい章を書き加える試みだと言える。

愛犬と泊まれるホテルは、共生社会のインフラになりうるか

ホテル フォレストヒルズ那須は、全コテージにプライベートドッグランを備え、レストランや温泉も愛犬と一緒に楽しめる“犬目線”のリゾートだ。
こうした施設が増えることは、「犬連れ旅行がしやすくなる」という利便性の話にとどまらない。
・長距離移動の負担を減らすこと
・犬が安心して過ごせる専用スペースを整えること
・周囲の人との距離感を取れる動線やルールを設計すること
これらはすべて、人と犬の双方のストレスを減らし、トラブルを避けるための“社会インフラ”でもある。ペット可物件やドッグランの整備と同じく、「行ける場所があるかどうか」は、犬と暮らす人生設計そのものを左右する。
運営会社の株式会社P3は、愛犬向けイベントやサービス開発と、人の健康を支える飲料事業を並行して展開する。ここには「犬だけ」でも「人だけ」でもない、“家族全体のウェルビーイング”を軸にした発想がある。
気候変動の影響で、避難所運営や防災の文脈でも「ペット同伴のあり方」が議題に上る時代だ。ペットフレンドリーな宿泊施設や観光地のノウハウは、非常時の共生のかたちを考える際にも、重要なヒントになるだろう。

那須高原にあるホテル フォレストヒルズ那須

サンタがつなぐ、次の一手——ペットツーリズムから共生社会のモデルへ

with Dogs club とエコサンタ、フォレストヒルズ那須、そして那須高原サンタクロース村。今回の企画は、企業・NPO・地域・宿泊施設がつながる「共創プロジェクト」としての側面も持つだろう。
次の一手として考えられるのは、たとえばこんな展開だ。
・犬の福祉やしつけ、環境配慮型のペットグッズを学べるワークショップ
・地元の子どもたちと犬が参加する「森と犬の学校」プログラム
・環境保全活動や保護犬支援と連動した宿泊プラン
観光としての“非日常”をきっかけに、日常の行動へとつながる仕掛けをどれだけ用意できるか。そこに、このプロジェクトの成否がかかっていると言えるかもしれない。

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