
★要点
太陽光発電の世界的大手LONGi(ロンジ)が、COP30の機会に「気候変動対策ホワイトペーパー」に加え、初となる「TNFD報告書」を発表。脱炭素(カーボンニュートラル)だけでなく、生物多様性や水資源といった「自然資本」に関するリスクと機会を経営戦略に統合する姿勢を明確にした。
★背景
世界のサステナビリティ経営は、CO2排出量削減という「気候変動」対策(TCFD)から、事業活動が依存・影響する「自然」全体のリスクを開示する「TNFD」へと、その焦点が拡大している。特に、大規模な土地利用や資源採掘を伴うエネルギー産業にとって、自然資本との関係性をいかにマネジメントするかは、もはや企業の存続を左右する重要課題だ。
地球の未来を語る上で、「気候変動」と「生物多様性」はもはや切り離せない。太陽光発電のグローバルリーダーであるLONGiが、COP30という世界の舞台で示したのは、その事実だった。同社は、従来の脱炭素戦略に加え、事業が自然に与える影響とリスクを開示する「TNFD報告書」を初公表。太陽光パネルという“グリーンな製品”を作る企業が、その製造過程における自然との関係性までをも見つめ直し始めた。
なぜ太陽光パネルメーカーが「自然」を語るのか
太陽光発電は、脱炭素社会を実現するための切り札だ。しかし、そのパネルを製造するためには、シリコンなどの鉱物資源が必要であり、大規模な発電所を建設するには広大な土地も利用する。つまり、クリーンなエネルギーを生み出す事業活動もまた、森林や水資源、生物多様性といった「自然資本」に依存し、影響を与えずにはいられない。 TNFD(自然関連財務情報開示タスクフォース)は、こうした企業活動と自然との関係性を、投資家が判断できる形で「見える化」するための国際的な枠組み。LONGiがこれにいち早く対応し、報告書を公表したことは、同社が目先の利益だけでなく、長期的な事業の持続可能性を真摯に追求していることの表れだろう。

Scope3まで見据えた脱炭素と、再エネ比率47.5%という現在地
もちろん、LONGiは本業である脱炭素への取り組みも加速させている。同時に発表した「気候変動対策ホワイトペーパー」では、科学的根拠に基づくSBTiに沿い、2030年までに自社(Scope1, 2)の排出量を60%削減するだけでなく、サプライチェーン全体(Scope3)の排出原単位も52%削減するという野心的な目標を掲げた。 その足場は固い。2024年には、事業活動で使う電力の47.5%を再生可能エネルギーで賄った。自らが作る太陽光パネルの恩恵を、自社の製造プロセスにも還流させる。その循環こそが、説得力のある脱炭素戦略の基盤となる。
次のゲームは「統合思考」。気候と自然を両輪で
かつて、企業の環境報告はCO2排出量の開示が中心だった。しかし、これからは違う。気候変動という「気象」の問題と、生物多様性という「生態系」の問題を、いかに統合的に捉え、経営戦略に落とし込めるか。その「統合思考」こそが、企業の未来を左右する。 LONGiの今回の発表は、太陽光発電業界のリーダーとして、その新しいゲームのルールをいち早く実践してみせた格好だ。クリーンなエネルギーを供給する責任と、その過程で自然に与える影響への責任。その両方を引き受け、透明性高く開示していく。それが、これからのグローバル企業の新たなスタンダードになる。
・「2024-2025 気候変動対策ホワイトペーパー」(英語版)https://www.longi.com/en/download/?categoryId=322
・TNFD報告書(英語版)https://www.longi.com/en/download/?categoryId=385
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