★ここが重要!

★要点
株式会社伊勢藤が、収納一体型で家族全員に対応する簡易トイレ「Mimamo」を今年3月に発売。核となるのは、“非常用”を“日常品質”へ引き上げる設計思想。
★背景
地震・豪雨が常態化し、避難生活の長期化も想定される時代。水・電気に続き、トイレも“健康と尊厳”を守る基盤インフラだ。感染症対策と高齢化を踏まえ、質の再設計が急務となっている。

災害は、忘れた頃ではなく、忘れさせない頻度でやってくる。避難所の課題として繰り返し挙がるのがトイレだ。水が止まり、仮設が不足し、列ができる。羞恥と不安が積み重なる。株式会社伊勢藤が3月に発売する「簡易トイレ Mimamo」は、その“当たり前の不便”を設計でほどこうとする一台である。

低さが生む負担――“35cm問題”を越える42cm

一般的な簡易トイレの座面は約35cm前後なのに対して、平時の洋式便座は約40~42cmが主流だ。この数センチの差が、膝や腰への負担を増やし、特に高齢者にとっては立ち座りが一仕事になる。
Mimamoは座面を約42cmに設定し、家庭のトイレと近い高さで“いつもの感覚”を再現した。不安が募る避難生活では、身体的な違和感が心理的ストレスを増幅する。座るという日常動作の再現は、心の揺れを抑える装置でもある。
耐荷重は約150kg。便座は家庭用と同種の樹脂を用い、抗菌加工を施すことで直接触れる部分を清潔な状態で使用できる。避難所という感染症リスクが高まる環境を前提にした設計だ。

“もしも”を箱に入れる――収納一体で慌てない

避難時の混乱は、探し物から始まる。凝固剤はどこか、処理袋は足りるか。Mimamoは収納ボックスを一体化し、トイレットペーパー、凝固剤、ウェットティッシュ、ハンドジェルをあらかじめセットできる仕様で設計されている。
取り出しやすい形状で、使用時の動線を短くする。簡易トイレに収納機能を備えた例は少ない。備蓄を“散らさない”発想は、家庭内BCP(事業継続計画ならぬ生活継続計画)の要だ。使う瞬間の迷いを減らすことが、避難生活の質を底上げする。

家族全員にフィットする便座――22cmへの可変式

本体を一段にすれば座面は約22cm。子どもが足をつき、踏ん張りやすい高さだ。一般に幼児の適正座面高は22~25cmとされる。大人42cm、子ども22cm。家族構成を前提に一台で賄う可変設計は、物資を増やせない非常時に合理的だ。
補助便座を載せれば幼児にも対応できるため、家族の誰かが我慢を強いられない優秀な防災グッズとなっている。

水に強く、丸ごと洗える――段ボールからの脱却

段ボール製は軽量だが、水や湿気に弱く、豪雨や断水下では衛生維持が難しい。そういった事情を考慮し、Mimamoはプラスチック製で開発された。汚れは水洗い、または拭き取りで対応可能で、濡れても使用できるため繰り返し使えるのが特長だ。
使用後はフタ付きバケツに一時保管できる。災害時にごみ収集が滞る事態を想定し、一定期間の保管を可能にした。抗菌仕様で衛生面にも配慮がされており、トイレは“その場しのぎ”ではなく、数日~数週間を支える設備であるべきだという思想が透ける。

防災を“イベント”から“習慣”へ

地震、豪雨、猛暑。気候変動が災害の頻度と強度を押し上げる。避難所のトイレ問題は繰り返し報じられてきたが、家庭の備えは更新されていないことが多い。水や食料に比べ、トイレは後回しにされがちだ。
だが、排泄は止められない。トイレは人々の健康と尊厳の根幹を担っているため、Mimamoは、非常用を“日常品質”へ近づけることで、防災を特別な行為から日々の延長へ引き寄せる。
備えるとは、恐れることではない。安心を具体化することだ。座れる安心を、家に置く。小さな設計の差が、非常時の風景を変えるだろう。

【商品情報】
商品名:簡易トイレ Mimamo
サイズ:組立時 約W30×D37.5×H42.5cm/収納時 約W30×D37.5×H23cm
材質:ABS樹脂、ポリプロピレン
耐荷重:約150kg
カラー:ホワイト、グレー

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