
★要点
JERAとセ・リーグ6球団が、選手・監督・ファンを巻き込み「気づく→行動する」を3年で設計する共創プロジェクトを開始。象徴施策として、バーチャルPPAで環境価値を調達し、試合に必要な電力のCO₂排出を“実質ゼロ”にする「灯セ、ナイター」を打ち出した。
★背景
セ・リーグの年間入場者数は2025年シーズン合計で14,720,171人。巨大な日常娯楽は、社会に価値観を浸透させる“装置”にもなる。脱炭素を「正しさ」ではなく「参加体験」に落とし込めるかが勝負だ。
脱炭素は、技術だけでは進まない。人が動かないからだ。だからこそ、14,720,171人が集まる場所に意味がある。JERAとセ・リーグ6球団が立ち上げた「灯セ、みんなで。」は、球場を“学びの場”に変える試みである。しかも説教臭くしない。まずは気づく。次に知る。そして最後に、日常で行動する。3年のロードマップを切った。
「冠スポンサー」から「共創」へ。協賛の次に来る役割
JERAがセ・リーグのタイトルパートナーとして特別協賛を始めたのは2020年。以降、2022年からはシティクリーン活動や次世代支援など社会貢献活動も重ねてきたという。今回のプロジェクトは、その延長線上で「ファンと一緒に社会をよくする」へ踏み込む宣言でもある。
スポーツは、勝敗の外側に文化を作る。分別、節電、移動、寄付、教育。行動は“日常の型”に落ちたとき広がる。球場は、その型を作れる数少ない場所だ。

3年ロードマップの狙い——「気づき」を“行動”に変換する
ロードマップは明確だ。
1年目:環境・エネルギー問題に気づき、知ってもらう(冠試合のクリーンエネルギー化、特設サイト、SNS参加型施策)。
2〜3年目:発信と取り組みを進化させ、ファンが日常で行動に移せる状態へ。
この設計の巧さは、最初から「やれ」と言わないところにある。気づきの摩擦を下げ、参加の入口を増やす。行動変容を“気分”ではなく“導線”で作る発想だ。

象徴施策「灯セ、ナイター」。バーチャルPPAで“試合の電気”を実質ゼロへ
目玉は「JERAクリーンエネルギーで灯セ、ナイター」。JERA Crossが本プロジェクト向けの太陽光発電所「JERA×セ・リーグ みんなのソーラーパーク」を用意し、そこで生まれる環境価値をバーチャルPPAで各球団が取得。取得した環境価値を使い、試合に必要な電力のCO₂排出量を実質ゼロにするという。初年度は各球団1試合程度から始め、今後増やす方針だ。
バーチャルPPAは、電気そのものではなく「非化石証書などの環境価値」を契約で調達し、使用電力の脱炭素を裏付ける仕組みとして説明されることが多い。実際、JERA Crossが関わる別案件でも、太陽光由来の環境価値(非化石証書)を長期調達する枠組みとして示されている。
つまりここで起きているのは、「球場の電気を変える」だけではない。電気の由来を語れるスポーツへ、試合の裏側を更新する試みだ。

球場の脱炭素は“設備”だけで終わらない
リリースは、球場設備のCO₂削減に加え、ファンが球場内外で取り組める施策も検討するとしている。
ここが勝負どころだ。試合の数時間だけクリーンでも、帰り道の渋滞とごみが増えれば意味が薄れる。だから本質は、「観戦体験」そのものを、少しだけ低負荷に再設計できるかにある。
例えば、交通の分散、リユース容器、分別のゲーム化、マイボトル導線、地域電源との接続——小さな行動が“楽しさ”として定着すれば、プロジェクトは球場の外へ出る。
「環境価値」の透明性と、グリーンウォッシュの回避
環境価値の調達は、強力だが誤解も生む。「実質ゼロ」は、言い方次第で“魔法”に見える。だからこそ、調達方法、対象範囲、検証の仕組みを分かりやすく示すことが重要になる。バーチャルPPAは透明性を高める方向で普及してきたが、運用の説明が追いつかないと反発も起きる。
「灯セ、みんなで。」が本当に強いプロジェクトになる条件は、ここだろう。盛り上げるほど、説明責任も増える。ファンが“納得して参加できる脱炭素”を作れるかどうか。
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