★ここが重要!

★要点
R不動産が窓口を務める「都市と循環」実行委員会は、2026年5月14日から16日まで、京都・二条エリアの旧・京都市児童福祉センターを会場に「都市と循環 Circular Cities Conference & Festival 2026」を開催する。キーノートにはヤン・ゲール氏、アラステア・パーヴィン氏、小山田徹氏が登壇し、建築、都市、工芸、教育、エネルギー、里山、アート、金融などを横断して“循環する都市”の可能性を議論する。
★背景
気候危機、空き家・空き施設の増加、建設資材高騰、地域コミュニティの希薄化が同時に進む中、都市は「つくって壊す」だけでは立ち行かない。古い建物を活かし、素材を循環させ、人の関係性を編み直す。今回掲げられた「Can a city be fermented?」という問いは、都市を機械ではなく、時間をかけて変化する“発酵する生態系”として捉え直す試みだ。

都市は、発酵するのか。京都・二条で開かれる「都市と循環2026」は、少し不思議な問いを掲げている。発酵とは、異なるものが混ざり、時間をかけて、別の価値へ変わる営みだ。ならば都市も、建築、食、工芸、教育、金融、エネルギー、アート、地域活動が混ざり合うことで、次の姿へ変われるのではないか。会場となるのは、2024年に閉鎖された旧・京都市児童福祉センター。使われなくなった公共施設を3日間だけの拠点に変え、国内外の実践者が集う。テーマは「未来の古民家」。それは懐古ではない。100年後、200年後にも残り、使われ、直され、愛される建築と暮らしを、いまどう設計するかという問いである。

旧施設が3日間の“実験都市”になる——会場は旧・京都市児童福祉センター

「都市と循環2026」は、2026年5月14日、15日、16日の3日間、京都・二条エリアで開催されるカンファレンス&フェスティバルだ。主催は「都市と循環」実行委員会、窓口はR不動産株式会社。共催は京都市。会場は、旧・京都市児童福祉センターである。
この会場選びが、すでにメッセージになっている。旧・京都市児童福祉センターは、かつて京都の児童福祉拠点として使われてきた施設だ。老朽化などに伴い移転し、2024年に閉鎖された。つまり、役割を終えた公共施設である。だが、役割を終えた建物は、価値を失った建物ではない。むしろ、次の使い方を待つ都市資源だ。
「都市と循環2026」は、この空き施設をカンファレンス、展示会、ワークショップ、フードイベント、アートインスタレーション、交流会の場として使う。単にイベントを開くのではなく、“使われなくなった場所をどう再編集するか”を実際に見せる。都市の循環を語る場が、都市の循環そのものになる。
スクラップ&ビルドではなく、暫定利用、再編集、再接続。そこに、これからの都市更新のリアリティがある。大規模再開発だけが街を変える時代ではない。眠っている建物に、人と活動を入れ直す。そこから街はもう一度動き出す。

キーワードは「未来の古民家」——懐かしさではなく、100年後の設計思想

今回の中心テーマのひとつが「未来の古民家」だ。古民家という言葉には、木、土、紙、縁側、庭、修繕、継承といったイメージがある。だが「未来の古民家」は、昔の家をそのまま復元する話ではない。これからつくる建物が、100年後、200年後に“古民家”と呼ばれる存在になるには、何が必要かという問いである。
江戸時代以来の日本の住まいには、素材の再利用、修繕、増改築、地域の職人技、自然との調整が組み込まれていた。現代建築は高性能化し、構造計算や法制度、断熱、耐震、設備性能が不可欠になった一方で、解体や廃棄も増えた。性能を上げながら、どう直し続けるか。安全性を確保しながら、どう素材を循環させるか。ここに難しさがある。
「都市と循環2026」では、建材、資源、工法、エネルギー、災害への備え、家具、土木技術など、多様な領域から「未来の古民家」を考える展示会が開かれる。つまり、古民家は過去の遺産ではなく、未来の設計課題として扱われる。
これは建築業界だけの話ではない。住まいは、暮らしの器であり、地域経済の基盤であり、資源の保管庫でもある。壊して捨てる建築から、使い続けて価値を増す建築へ。未来の古民家という言葉は、その転換を直感的に伝える。

ヤン・ゲール、WikiHouse、小山田徹——都市を“人の活動”から捉え直す3日間

キーノートスピーカーの顔ぶれも、このイベントの射程を示している。
5月14日は、デンマークの建築家ヤン・ゲール氏。著書『人間の街』などで知られ、都市を建物の集合ではなく、人の活動が生まれる公共空間として捉えてきた人物だ。「何かが起こるから何かが起こり、そこからまた何かが起こる」という考え方は、「都市と循環」のテーマとよく響き合う。循環とは、モノの流れだけではない。人の偶然の出会い、会話、滞在、歩行、視線もまた、都市の循環である。
5月15日は、「WikiHouse」を牽引するOpen Systems Lab共同創設者アラステア・パーヴィン氏。WikiHouseは、レゴのように誰でも組み立てられる建築システムとして始まったプロジェクトだ。建築を専門家だけの閉じた領域から開き、地域や市民が自分たちの住まいをつくる可能性を広げる。今回の「未来の古民家」にとって、建築の民主化という視点は大きなヒントになる。
5月16日は、アーティスト・グループ「dumb type」の創設メンバーであり、京都市立芸術大学理事長・学長の小山田徹氏。小山田氏は、共有空間やカフェ、コミュニティをつくる実践を続けてきた。建築をモノとしてではなく、人が集まり、関係が生まれる場として扱う視点だ。
この3人に共通するのは、都市をハードだけで見ないことだ。都市は、建物、道路、設備だけではない。そこに人がいて、活動があり、関係が生まれる。循環する都市とは、資源の循環だけでなく、行為と関係が循環する都市でもある。

工芸、食、教育、木造、古楽器、地下水——都市の循環は“横断”から始まる

タイムテーブルを見ると、「都市と循環2026」が単なる建築カンファレンスではないことが分かる。初日は「未来の古民家〜ポストシティ〜」から始まり、WOTAの前田瑶介氏、Arupの菅健太郎氏らが登壇する。水、インフラ、都市の自立性をめぐる議論が予想される。
同じ日に、仏教の社会実装、工芸と建築の間、教育と循環、木造と循環、古楽器と循環といったテーマが並ぶ。唐紙職人、木桶職人、建築家、保育園経営者、建設業界関係者、古楽器製作家。登壇者の幅が広い。
2日目は建築と循環を軸に、マテリアル、屋根材、エネルギー自給、ドイツの森林・建築・地域経済、自然素材住宅、和食、京都の地下水、里山、絹織物と生態系へと広がる。夜には使われなくなった家電を電子楽器へ改造して演奏するELECTRONICOS FANTASTICOS!のライブも予定されている。
3日目は、Artist in Residenceによる地域再生・施設再生、スポーツと循環、お金と循環へと展開し、最後は「未来の古民家パワーセッション」で締める。
ここで扱われる循環は、狭い意味のリサイクルではない。素材、エネルギー、水、食、教育、地域文化、金融、芸術、人の移動と交流まで含む。都市は、単一の専門領域では変えられない。だからこそ、異なる分野が混ざる場が必要になる。

「発酵する都市」という比喩——混ざり合い、時間をかけ、価値が変わる

サブタイトルは「Can a city be fermented?」。“都市は発酵するか?”である。
この比喩は、うまい。発酵は、腐敗と紙一重だ。素材、環境、時間、菌の働きがそろえば、食べ物はうま味を増す。条件が崩れれば、腐る。都市も同じだ。空き家、老朽施設、人口減少、分断、資源不足。それらは放置すれば劣化する。しかし、誰かが手を入れ、異なる人や技術や文化を混ぜ、時間をかけて育てれば、新しい価値に変わる。
発酵する都市とは、管理され尽くした都市ではない。余白があり、偶然があり、使いながら変わる都市だ。古い建物を別の用途で使う。職人の技を現代建築に接続する。地下水や里山の記憶を都市生活に戻す。金融やお金の流れを循環型プロジェクトへ向ける。こうした小さな作用が積み重なって、街は変質する。
ここで重要なのは、変化を急ぎすぎないことだ。都市には時間が必要だ。住民の記憶、建物の履歴、素材の経年変化、地域の祭りや商い。そうした時間を切り捨てる都市更新は、効率的に見えても薄くなる。発酵する都市は、時間を資源として扱う。

循環建築から循環都市へ——“壊さず稼ぐ”仕組みは広がるか

近年、建築や不動産の世界では、再生建築や循環建築への関心が高まっている。建設費の高騰、資材不足、CO2削減、廃棄物削減、空きビル増加が重なり、「古いから壊す」という前提が揺らいでいる。
Maintainableでも、東急不動産が国内初の「再生建築ファンド」を組成し、築古ビルを再生建築として流通させる取り組みを紹介した。そこでは、再生建築を設計の話で終わらせず、市場に流通する“資産クラス”に変えることの重要性が指摘されている。つまり、壊さず使うだけでなく、壊さず稼ぐ仕組みが必要なのだ。
「都市と循環2026」が扱う「未来の古民家」も、この流れと重なる。建物を長く使うには、思想だけでは足りない。法制度、金融、保険、性能評価、修繕技術、材料供給、職人ネットワーク、運営者、利用者の関係性が必要だ。
都市の循環は、建築単体では完結しない。資金が循環し、人が集まり、技術が更新され、地域が支え、使う理由が生まれる。そこまで設計して初めて、建物は長生きする。

京都で開催する意味——観光都市ではなく、循環都市としての京都

今回の開催地が京都であることにも意味がある。京都は、古いものを残している都市として知られる。しかし、京都の強さは“保存”だけではない。町家、路地、職人、大学、寺社、地下水、食文化、工芸、アート、学生、観光客。異なる時間軸と活動が、狭い都市空間の中で重なっている。
一方で、京都も課題を抱える。観光の過密、住まいの高騰、空き家、伝統産業の担い手不足、公共施設の老朽化、気候変動による暑熱化。京都は、保存と更新の緊張関係を常に抱えている都市だ。だからこそ、「都市と循環」を議論する舞台としてふさわしい。
旧・京都市児童福祉センターを会場にすることは、京都の都市資産をどう次に渡すかという実験でもある。閉じた公共施設を一時的に開き、多分野の人が集まり、展示し、話し、食べ、音を鳴らし、交流する。これは、建物の未来を考える実地調査のようなものだ。
都市を守るとは、固定することではない。使いながら変えることだ。京都はその難しさと可能性を、最も濃く見せる場所のひとつである。

参加する価値——知識を得るだけでなく、関係をつくる場

「都市と循環2026」は、カンファレンスであり、展示会であり、フェスティバルであり、ミートアップでもある。そこが肝だ。
循環型の社会は、知識だけでは実装できない。建材メーカー、設計者、自治体、金融機関、教育関係者、アーティスト、職人、地域プレイヤー、事業者が出会い、具体的な協業に結びつく必要がある。展示会や交流会、大規模ミートアップ、パーティーが組み込まれているのは、そのためだろう。
特に「未来の古民家」展示会は、これからの住まい、建材、資源、工法、暮らしのヒントを得る場として設計されている。単なる商品展示ではなく、事業者同士の連携、プロジェクト化、地域実装への入口になる可能性がある。
都市の循環は、プレゼンテーションだけでは進まない。名刺交換、立ち話、夜の会話、展示の前での偶然の出会い。そうした非公式な接点が、新しいプロジェクトを生む。だからこのイベントは、都市を考える場であると同時に、都市的な関係性を実際につくる場でもある。

“循環”をイベントで終わらせないために

「都市と循環2026」が本当に意味を持つかどうかは、3日間の熱量だけでは決まらない。重要なのは、その後だ。
第一に、出会った事業者や参加者が、具体的なプロジェクトへ進めること。未来の古民家、空き施設再生、地域インフラ、自然素材、エネルギー自立、公共空間の活用。テーマは多い。イベント後に、試作や実証へ移れる仕組みが必要だ。
第二に、京都で得た知見を他地域へ展開すること。旧公共施設、空き家、古い学校、廃校、倉庫、商店街、里山、港町。全国には、再編集を待つ都市資源が無数にある。京都の実験は、他の都市へのヒントになる。
第三に、循環を数値と物語の両方で伝えること。CO2削減、廃棄物削減、建物寿命、地域経済効果、来場者数、事業連携数。数字は説得力を生む。一方で、誰が関わり、何を感じ、どう変わったかという物語は、次の参加者を呼ぶ。
循環は、概念ではなく習慣にしなければならない。都市と循環を、3日間のフェスティバルから、365日の実践へ。そこに、このイベントの本当の勝負がある。

この記事の要約——「都市と循環2026」とは何か

「都市と循環 Circular Cities Conference & Festival 2026」は、2026年5月14日から16日まで京都・二条の旧・京都市児童福祉センターで開催されるカンファレンス&フェスティバルだ。R不動産が窓口を務める「都市と循環」実行委員会が主催し、京都市が共催する。テーマは「Can a city be fermented?」と「未来の古民家」。ヤン・ゲール氏、アラステア・パーヴィン氏、小山田徹氏らをキーノートに迎え、建築、都市、工芸、教育、木造、エネルギー、地下水、里山、金融、アートなどを横断し、循環する都市のあり方を議論する。会場となる旧公共施設そのものを活用しながら、壊さず変わる都市、時間をかけて価値が増す建築、異分野が混ざり合う社会実装の可能性を探る場である。

FAQ

Q1. 「都市と循環2026」とは何か。
「都市と循環2026」は、循環をテーマに建築、都市、工芸、教育、食、エネルギー、アート、金融などの実践者が集まるカンファレンス&フェスティバルである。正式名称は「都市と循環 Circular Cities Conference & Festival 2026」。

Q2. 開催日はいつか。
2026年5月14日(木)、15日(金)、16日(土)の3日間である。

Q3. 会場はどこか。
京都・二条エリアの旧・京都市児童福祉センター。住所は京都府京都市上京区竹屋町通千本東入主税町910-25。

Q4. キーノートスピーカーは誰か。
デンマークの建築家ヤン・ゲール氏、「WikiHouse」を牽引するOpen Systems Lab共同創設者アラステア・パーヴィン氏、アーティスト・グループ「dumb type」創設メンバーで京都市立芸術大学理事長・学長の小山田徹氏が登壇予定だ。

Q5. 「未来の古民家」とは何か。
昔の古民家をそのまま復元することではなく、これからつくる建物が100年後、200年後にも使われ、修繕され、価値を持ち続けるには何が必要かを考えるテーマである。素材、資源循環、工法、エネルギー、災害対応、暮らし方まで含む。

Q6. 「都市は発酵するか」とはどういう意味か。
異なる人、素材、技術、文化、地域資源が混ざり合い、時間をかけて新しい価値へ変わる都市のあり方を表す比喩である。都市を固定物ではなく、変化し続ける生態系として捉える視点だ。

イベント情報:
名称:都市と循環 Circular Cities Conference & Festival 2026
日程:2026年5月14日(木)、15日(金)、16日(土)
会場:旧・京都市児童福祉センター(京都府京都市上京区竹屋町通千本東入主税町910-25)
主催:「都市と循環」実行委員会(窓口/R不動産株式会社)
共催:京都市
公式サイト:cccf.jp
チケット:Peatix(https://cccf2026.peatix.com/
公式Instagram:@cccf_jp

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