
★要点
国際的評価を得たビールの副産物──麦芽・ホップ・酵母──を廃棄せず再利用し、極上の風味を備えたベーコンとして商品化。地域事業者の連携で持続可能な“食の循環”を具体化する挑戦。
★背景
食品ロスや副産物の廃棄が環境・経済双方の課題になる中、ビール醸造の過程で生じる大量の廃棄素材を価値ある食材へ変えるアップサイクルが国内外で注目。食の現場から循環経済を生む動きが広がっている。
廃棄されるはずだった素材が、香り高い食の主役になる時代が来た。東京都町田市で生まれた『麦香ビールベーコン -YOAKE仕込み-』は、金賞クラフトビール「YOAKE」の仕込み副産物──麦芽・ホップ・酵母──を極上の旨味として再利用した一品だ。単なる商品開発に留まらず、地域の循環を生む新たな食文化の種にもなりつつある。
副産物を捨てない発想──ビールの“余白”に価値を
ビール醸造の工程では、麦芽から糖分を抽出した後に残る麦芽粕や使い終わったホップ、酵母などが大量に発生する。これらは伝統的に飼料や肥料に使われることもあるが、十分な付加価値を見出せず廃棄される例も少なくない。
『麦香ビールベーコン -YOAKE仕込み-』の最大の特徴は、こうした“廃棄素材”を原料として積極的に使い、その魅力ある香りと旨味を食の主役として再定義した点にある。醸造副産物を塩や香辛料とともに約1週間熟成し、さらにビールを用いて風味付けする“二段仕込み”、山桜・ブナのミックスチップでスモークという工程を経て、極上のベーコンへと昇華させた。


食と循環の“現場”──地域事業者がつなぐ価値
このプロジェクトの背景には、町田のクラフトビールメーカーとドイツ伝統製法のハム・ソーセージ専門店という異色のタッグがある。国際的なビール評価で金賞を獲得した「YOAKE」を手がける株式会社武相ブリュワリー(東京都町田市)と、ドイツ製法を守る「クロイツェル」(同市)が出会い、副産物を再利用するという共通の価値観のもとで商品化が進んだ。
店主は「ビールの芳醇な香りを発酵素材として感じた時、『これを活かさない手はない』と確信した」と語る。商品化は単独の企業努力にとどまらず、地域事業者同士の共創による“食の循環”そのものの象徴でもある。

グローバルな潮流と日本の現場
昨今、国内外では、食品ロスや副産物のアップサイクルが急速に広がっている。横浜では未販売のパンや余剰食材を原料にしたクラフトビールプロジェクトが展開されている他、使用済みホップを乾燥・再利用する取り組みも進行中で、クラフトビールの素材として新たな商品開発に挑戦する例も見られる。
こうした動きは、循環経済という概念が食品業界にも浸透しつつあることを示す。廃棄物を単なる“ゴミ”と捉えるのではなく、価値ある資源として捉え直す発想が、地球環境の負荷軽減と地域経済の活性化を同時に実現しようとしている。
次の展開──“食の循環”を加速する条件
『麦香ビールベーコン』は数量限定の商品だが、サステナブルな価値を広げる可能性は大きい。今後の鍵は、こうした取り組みを安定的なサプライチェーンへとつなげること。醸造副産物だけでなく、発酵残渣の活用範囲を広げ、食品業界全体でアップサイクルの仕組みを構築することが求められる。
また、消費者の価値観も変わりつつある。内から外へ、味から背景へ。食材がどのようにして皿に至ったかを理解することが、購買行動の新たな軸になりつつある。
食と環境の交差点で、生まれた“麦香”の一皿。その背景には、捨てられる素材に新たな命を吹き込む胆力と、地域の未来を見据える視点がある。
【商品情報】
商品名: 麦香ビールベーコン -YOAKE仕込み-
発売日: 2026年1月30日(金)より数量限定販売
価格: 100gあたり 590円(税抜)
内容量: 100g / 200g
販売形態: クロイツェル店頭およびオンラインショップ
https://www.kreutzer.gr.jp/
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