群馬大学情報学部の研究チームが、食べ物の選択において健康を優先する際の脳活動を解明した。研究は、ヒトが「おいしいが健康に良くない食べ物」よりも「健康に良いがあまりおいしくない食べ物」を選ぶ際に、前頭前野が重要な役割を果たしていることを示している。この成果は、健康的な食選択において自制心が重要であり、その強さが脳活動に反映されることを示唆している。

おいしさの誘惑を乗り越える脳の働きが明らかに

群馬大学の竹鼻愛研究員(研究当時)、地村弘二教授らの研究チームは、ヒトが食べ物を選択する際において健康を優先する場合、前頭前野の活動が大きくなることを明らかにした。特に、自制心の強さがこの前頭前野の活動と密接に関係していることが示された。この発見は、アメリカの学術論文誌「Cerebral Cortex」で発表された。
研究チームは、被験者に対しておいしさと健康を基準に食べ物を評価させ、「おいしいが健康に良くない食品」と「健康に良いがあまりおいしくない食品」に分類する実験を行った。その後、被験者がこれらの食品からどちらを選ぶかを選択させる過程で脳活動を計測した。その結果、健康的な食品を選択した際、前頭前野の活動が顕著に観察された。
さらに、金銭報酬の選択課題も行われ、短期的な利益よりも長期的な利益を優先する自制心の強さを測定した。これにより、前頭前野の活動が自制心の強い被験者においてより顕著に見られることが明らかになった。
本研究の結果は、健康的な食選択が前頭前野の活動に依存していることを示しており、この領域がヒト特有の長期的利益を優先する選択に関連していることを示唆している。これは、他の動物種と比較して、ヒトが健康を優先する選択をする際に、前頭前野が大きな役割を果たしていることを意味する。
また、これまで自制心と関連があると考えられていた認知機能が、健康を優先する食選択とは直接的に関係しないことも示唆された。この発見は、健康的な食生活の維持において前頭前野が果たす役割の重要性を強調している。
研究チームは、今回の結果が示唆するように、健康的な食生活を維持するためには、前頭前野の自制の機構が重要であると考えている。今後の研究では、前頭前野の活動を促進する方法や、その活動を高めるための介入手段が模索されることが期待される。また、健康に良い選択を促進するための社会的、教育的なアプローチにも応用が考えられる。
今回の研究は、健康的な生活習慣を維持するための科学的な基盤を提供するもので、将来的には健康増進に寄与する新たな戦略の開発に繋がる可能性がある。

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