★ここが重要!

★要点
KEENとSpace Availableが共同開発した「UNEEK 360」が2026年4月22日(水)より発売開始。接着剤不使用・分解可能な構造を採用し、フットウェアを“使い捨てから循環資源へ”と転換する試み。
★背景
年間240億足とも言われる靴の大量生産・廃棄問題を背景に、ファッション業界でも循環設計(サーキュラー・デザイン)が急速に重要性を増している。

靴は消耗品である――そんな常識が、静かに揺らぎ始めている。都市と自然を往復する日常の中で、履き潰され、捨てられてきたフットウェア。その構造そのものを見直し、「分解できること」を前提に設計された一足が登場した。KEENとSpace Availableによる「UNEEK 360」は、プロダクトの寿命と責任を再定義する実験だ。

“接着しない”という革命。靴づくりの前提を覆す

従来のスニーカーやサンダルは、接着剤によって複数素材を固定する構造が主流だった。しかしこの構造は、強度や量産性に優れる一方、分解やリサイクルを困難にする要因でもあった。
「UNEEK 360」はその前提を捨て、構成はわずか4パーツしかない。すべてのパーツがコードで固定され、溶剤や接着剤を一切使用していない。つまり、役目を終えた後に素材ごとに分解できるという、「廃棄を前提としない設計」という思想の転換だ。
さらに、アッパーにはリサイクルPET素材を採用。耐久性と軽量性を両立しながら、資源の再利用を前提にした素材循環を組み込んでいる。これまで最終製品として扱われていた靴が、本プロダクトでは“素材の途中段階”として再定義されている。

都市と自然を往復する、ライフスタイルの再設計

KEENが掲げてきたのは、「アウトドアはどこにでもある」という思想だ。都市と自然を分断せず、連続した体験として捉えている。
今回のコラボでは、その思想にSpace Availableの文化的視点が重なる。特に、東京のレコードショップを巡るキャンペーンフィルムが象徴的だ。音楽、都市、ストリート、そして個人の好奇心。これらが交差する空間において、靴は単なる機能装置ではなく、“移動する文化の媒体”となる。
つまり「UNEEK 360」は、アウトドアギアでもファッションでもない。都市生活者が自然との接点を日常に取り戻すためのインターフェースといえるだろう。

240億足の現実――フットウェアが抱える構造的課題

世界では年間約240億足の靴が生産されているとされる。単純計算で、一人あたり年間3足。だが、その多くは埋立地に送られ、分解されることなく環境負荷として蓄積されていく。
問題は「数」だけではない。複合素材・接着構造・グローバル供給網。これらが絡み合い、リサイクルや再利用を難しくしている。
こうした状況に対し、「UNEEK 360」は明確な問いを投げかける。
――なぜ、分解できないものを作り続けるのか。
この問いは、建築や家電、自動車など、他の産業にも共通する。分解可能性(Design for Disassembly)は、もはや一部の先進的取り組みではなく、持続可能性の前提条件へと変わりつつある。

循環は“思想”から“構造”へ

サステナブルという言葉は、すでに市場に溢れている。だが、その多くは素材や製造工程の改善にとどまってきた。
「UNEEK 360」が示すのは、その一歩先。
製品の“循環の仕方”まで設計すること。つまり、使用後のリサイクルまで設計範囲に含めるという発想だ。
循環型社会における、今後の課題は明確だ。
回収システムの構築、再利用のインフラ整備、そして消費者の意識転換。
製品単体ではなく、製品の設計段階で、循環の“仕組み”を成立させられるかが問われるだろう。

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