ファッション業界では、サステナビリティの重要性が高まる中、廃棄される素材に新たな命を吹き込む「アップサイクル」が注目を集めている。単なるリサイクルとは異なり、アップサイクルは素材に新たな価値を加え、唯一無二の製品を生み出す試みだ。近年、多くのブランドがこのトレンドに乗り、持続可能な未来を目指した製品を次々と発表している。
土地の恵みを映したDEAN & DELUCAの新作バッグ、ロンシャンが提案する遊び心とサステナビリティの融合。
2025年1月、DEAN & DELUCAが天然染めプロジェクト『BetulaN(ベチュラン)』と協力して生み出したショッピングバッグは、アップサイクルの象徴とも言えるアイテムだ。北海道で廃棄される予定だった間伐材や果実の皮、葉を使用し、職人の手作業による天然染めが施されたこのバッグは、それぞれ異なる色合いを持ち、「世界に一つだけ」の価値を提供している。
https://x.gd/DIN8A
フランスのメゾンブランド「ロンシャン」は、アトリエに眠る余剰素材を活用した「Re-Play(リプレイ)」コレクションを発表した。ツートンカラーのショルダーストラップを編み込んだバケットバッグ「リプレイ サングル」や、余りレザーを継ぎ合わせた「リプレイ パッチ」は、クリエイティビティと持続可能性を融合させたアイテムだ。これらの製品は、ファッションと環境保護が両立できる可能性を示している。
https://www.longchamp.com/jp/ja/
日本文化を纏う着物スーツの革新、nest Robeが描く循環型ファッションの未来。
広島県の瀬戸内ミライデザインが手掛ける「KIMONO SUIT(着物スーツ)」は、タンスに眠る着物をセミオーダーでスーツにアップサイクルするユニークなプロジェクトだ。留袖や和柄の生地を活かしたデザインは、現代のビジネスシーンで活用できるだけでなく、日本文化を次世代に引き継ぐ役割も果たしている。既製品の展開も視野に入れたこのプロジェクトは、国内外での展開が期待されている。
https://readyb.store/
いっぽう「nest Robe」が展開する「UpcycleLino(アップサイクルリノ)」シリーズは、裁断片を粉砕し再生糸に戻す技術を用いたプロジェクト。滋賀県の伝統技法「近江晒加工」により生まれたブラウスは、ナチュラルな風合いと独特のシボ形状を持つ。顧客の声を反映した新色展開は、ブランドと消費者が共に未来を作り上げる象徴的な取り組みだ。
https://store.nestrobe.com/nestrobe/pages/special20250102
これらの事例が示すのは、アップサイクルが単なる環境配慮だけでなく、新たなデザイン価値を生む可能性を秘めているということだ。素材に新たな命を吹き込み、使うたびに愛着が深まる製品は、ファッションの楽しみ方に新しい選択肢を与えてくれる。