都市型水害、ヒートアイランド、インフラの老朽化…。気候変動に伴い深刻化するこれらの課題に対し、「Dotcon(ドットコン)」という新しい都市インフラが注目を集めている。開発を手がけたのは、水処理や土木資材を扱うメーカーPUMP MAN。舗装を剥がさずに設置可能なこの透水性舗装システムは、日本国内はもとより中東・サウジアラビアでの導入も決まり、都市の水と熱の課題に挑む革新的技術として拡がり始めている。

「剥がさず還す」新構造が、都市インフラを変える。
Dotconは、従来のアスファルト舗装の上からでも設置できる特殊構造の透水性コンクリートシステムだ。独自開発の透水パネルと現場打設コンクリートを組み合わせることで、透水率100%、1枚あたり14リットルの貯留機能を実現。舗装面に降った雨水を即座に地中へと還し、都市型の集中豪雨やゲリラ豪雨による冠水リスクを大幅に低減する。
構造は勾配不要で水平施工が可能。最大5トン車までの荷重に耐える強度を持ち、既存舗装を壊すことなくインフラへの“後付け”ができることも大きな特徴で、粒径の大きい透水層により目詰まりしにくく、維持管理も簡便だ。
さらに同製品の実証実験では、舗装表面の温度を日中で平均1.2℃、夜間では最大2.4℃低下させる効果が確認されており、都市部のヒートアイランド現象の抑制にも寄与する。


日本から中東へ。グローバルに広がるDotconの可能性。
Dotconはすでに日本国内での導入が進んでおり、国土交通省の展示現場や地方自治体の広場、道路、公園などで施工実績を重ねている。DIY向けや簡易構造に特化した「Dotcon+」も開発され、住宅や小規模施設への展開も見込まれている。
注目すべきは、サウジアラビア・リヤドにある高級ホテル「シェラトン」への導入が決定したことだ。短時間豪雨と高温環境という極端な気候条件にさらされる同地域でも、Dotconは排水性能と温度抑制の両面で高く評価された。
現在、湾岸諸国での独占販売契約に向けた調整も進行中のようで、PUMP MANは中東の大手インフラ企業や水処理メーカーと連携しながら、現地実証施工を段階的に拡大する方針を示している。さらにアジア、アフリカ、北米への展開も視野に入れており、Dotconは「日本発のグリーンインフラ技術」として世界標準化を目指す段階に入っている。

気候変動に応える都市インフラの「新常識」。
これまで都市の雨水対策は「流して捌く」ことが主流だった。しかしDotconは、雨を“流す”のではなく、“還す”という真逆の思想で設計されている。これは都市空間の中に“地中への呼吸”を取り戻すことで、水害、気温上昇、老朽排水管の負荷といった複合的な課題に対し、1つの素材で多面的にアプローチする手法だ。
インフラのリニューアルが全国的に求められるなか、Dotconのような持続可能で高機能な舗装システムは、これからの都市にとって欠かせない存在になっていくだろう。気候変動というグローバルな課題に、素材と構造で挑む。その試みは、都市の足元からも始まっている。