芸術品を保つということ。
東京サニテイション代表の渡邊さんの経歴、そして視点は非常にユニークだ。
「前職は光学機器などを扱うメーカーで営業やマーケティングに関わっておりました。その視点があったからか、トイレ清掃マーケティングの導入価値も考えていました」。
通常の公共トイレ清掃の場合1日に1回程度だが、THE TOKYO TOILETではトイレを清潔に保つため1日3 回清掃に入る。要は、わずか1年で3 年分のデータが得られることになる。
「清掃に入るたびに汚れなどの指標を点数化させることで、定性的ではあるものの大量の統計データを収集できます。そこからマトリクスに落とし込む事で既存のトイレや、これから新しく出来るトイレの汚れやすい時間帯の分析や、清掃の頻度や時間帯を検討するなどといったことも可能でしょう。メンテナンスの最適化を提案できるのは、最も現場を知る我々の強みだと思います」。
同社では50 年以上にわたり東京都の公園を維持管理 しており、THE TOKYO TOILETの清掃も担っている。誇らしくもあり、同時に背筋が伸びる思いだったという。「渋谷区、そして観光協会との事業ということで、我々が担っているのは観光資源であり、芸術品の維持管理にほかなりません。その意識で日々取り組んでいます」。トイレは1カ所1カ所仕様も材質も異なる。ステンレス素材には皮脂汚れのケアを、ここはモルタルメインだからこの洗剤はNG…など細かく注意点がある。“観光資源であり、芸術品を清掃している”と渡邊さんが表現した各トイレ。同社のプロジェクトへの理解の深さと高い清掃技術が根底にあるからこそ、THE TOKYO TOILETは今日も適切に維持管理されている。
Text Hiroko Ito Photo Hiharu Takagi