高経年マンションと高齢居住者の増加に伴い、適正な管理の維持が困難になる事例が全国で相次いでいる。こうした状況を受けて、横浜市と一般社団法人マンション管理業協会は、2025年3月26日付で連携協定を締結した。分譲マンションの管理適正化を促進し、住環境の質を高めるための取り組みが始まっている。

管理不全に陥る前に支援。データを活用した予防的アプローチ。
全国的に分譲マンションの高経年化が進む中、横浜市では築40年以上の物件が増加し、管理不全や老朽化による課題が顕在化している。加えて、管理組合の担い手不足や高齢化が進み、長期修繕計画の見直しや資金調達といった管理上の意思決定が滞る例も少なくない。市はこうしたリスクを未然に防ぐため、今回、マンション管理業協会と連携し、要支援マンションへの対応強化に踏み出した。
この連携における中心的な役割を果たすのが、「マンション管理適正評価制度」だ。これは、マンション管理の状態を全国共通の基準で評価し、6段階で可視化する仕組み。評価には、管理組合の運営状況や修繕積立金の計画などが反映される。制度に基づき登録されたデータをもとに、横浜市が支援を必要とするマンションを抽出し、各種制度の活用を働きかけていく。
情報提供と制度連携で、継続可能な管理体制の構築へ。
市は、適正評価制度の情報を市民に広く周知するため、マンション管理業協会のホームページを通じた発信も進める。あわせて、独自に運用している「管理計画認定制度」との連携も検討し、複数の制度を有機的に活用する体制の構築を目指す。
また、横浜市は管理組合向けの補助制度も整備している。たとえば、長期修繕計画の作成にかかる委託費用に対し、上限20万円まで、費用の2分の1を補助する制度を用意している。こうした支援策とマンション管理業協会の評価制度を組み合わせることで、管理不全の予防と適正な資産管理の促進を両立させる方針だ。
都市部を中心に高経年マンションの課題は深刻化しており、横浜市とマンション管理業協会の連携は、全国に先駆けたモデルケースとして注目されている。今後、要支援マンションの抽出と対応のノウハウが蓄積されれば、他自治体における制度整備や官民協働の推進にもつながる可能性がある。
人口減少や高齢化が進む中、住まいの持続可能性が地域の存続にも直結する時代が到来している。マンションという集合住宅の形態が抱える課題に対し、行政と専門団体が手を取り合って挑む取り組みが本格化し始めている。
