株式会社四国の右下木の会社は、都市の公園や街路樹などで老齢化が進む広葉樹を、高付加価値な資源として再生するアップサイクル型の森林資源活用モデルを構築した。神戸市との連携プロジェクトでは、伐採木を原料にした備長炭の製品化が進行中で、今後全国の自治体に向けて、この新たな“樹木の活用”ソリューションを展開していくようだ。

全国の自治体関係者への提案。「捨てる」から「活かす」へ、広葉樹のアップサイクルが都市と森林の関係を変える。
都市の緑の象徴である街路樹や公園樹が、いま老齢期を迎え、大規模な更新や伐採のフェーズに入っている。高度経済成長期に一斉に植栽された木々が寿命を迎えるなか、住民からは倒木や落葉に関する苦情が増え、自治体は管理・処理費の増大に直面している。
加えて都市の拡大により、住宅地と森林が隣接する地域が全国で増加しており、樹木の伐採が単なる「除去行為」に留まるだけでなく、景観喪失や資源の未活用といった課題にも波及している。こうした中、「伐って終わり」ではなく「どう活かすか」に踏み込んだ提案を行うのが、徳島県美波町を拠点とする株式会社四国の右下木の会社だ。


木を“味わい”“学び”“関わる”循環ストーリーを体験する。
同社は、都市や里山の老齢広葉樹を、薪や備長炭など高付加価値なエネルギー資源として再生する独自のアップサイクルモデルを展開している。神戸市と連携したプロジェクトでは、公園伐採木を活用し、OEM備長炭として製品化。樹種の多様性や材の大径・不定形といった都市樹木特有の課題にも対応可能な製炭技術を有し、安定供給の体制も整えている。
さらに単なる製品化に留まらず、「地炎地食」や「里山ガストロノミー」などのコンセプトのもと、伐採から製炭、飲食店との連携、さらには市民参加のイベントまでを通じて、地域と森をつなぐストーリー性のある循環モデルを構築している。都市に住まう人々が木を“味わい”“学び”“関わる”ことができる、体験価値の創出にも注力しているのが特徴だ。
伐採を前提としない、活用を前提とした都市林業のあり方は、「森林を持つ都市」が増えつつある現代において、極めて現実的な選択肢となりうるだろう。樹木の寿命を迎える街で、伐るだけではなく“どう使うか”。四国の右下木の会社は、全国の自治体に問いかける。
