太陽光発電所がサイバー攻撃の標的となるリスクが高まる中、株式会社オルテナジーが次世代遠隔監視システム『ソーラーグリッドPPH(Public Power Hub)』の提案を開始した。モバイル専用網による通信技術を核とし、複数の発電所を安価かつ効率的に一元管理できるだけでなく、堅牢なセキュリティ対策により情報漏洩や不正操作のリスクを大幅に低減するという。今後の分散型エネルギー社会において、重要な基盤技術となる可能性が高い。

サイバー攻撃の標的となる太陽光発電所。分散型エネルギーのセキュリティ対策時代へ。
太陽光や蓄電池を活用する分散型エネルギーシステムの拡大に伴い、発電所を狙ったサイバー攻撃のリスクが顕在化している。2024年5月には国内の遠隔監視機器約800台が攻撃を受け、不正送金に悪用されたとの報道があった。またオランダの研究者による調査では、発電所を一斉に停止させることで電力系統に大規模な影響を及ぼす可能性があると指摘されている。
中でも、出力50kW未満の低圧太陽光発電所は、電気事業法上の明確なサイバーセキュリティ基準が存在しないため、技術的・制度的な対策の空白地帯となっていた。こうした背景を踏まえ、経済産業省の「産業サイバーセキュリティ研究会」では、再エネ設備のセキュリティ強化が喫緊の政策課題として議論されている。
オルテナジーはこの動向を捉え、EX4Energy株式会社と共同で2023年から『ソーラーグリッドPPH(ソラグリPPH)』の開発を進めてきた。経済産業省のワーキンググループでも、本取り組みは「分散電源のセキュリティ確保と運用の好事例」として紹介されている。

発電所の安定運用と効率化を支える中核技術、モバイル専用網と独自設計。
『ソラグリPPH』の最大の特長は、インターネットと切り離された「モバイル専用網」を活用している点にある。これにより、従来のような外部からの不正アクセス経路を物理的に遮断し、通信インフラ自体を閉じた環境に保つことができる。加えて、AWS(Amazon Web Services)上で稼働するソフトウェアに二要素認証やタイムアウト機能を実装することで、発電所管理の操作権限を厳格に制御している。
システム構造もシンプルで、ゲートウェイ装置が不要なため、小規模な低圧太陽光発電所でも導入コストを抑えた運用が可能だ。特にファーウェイ社製のパワーコンディショナーを使用する現場では、Smart LoggerにSIMを直接挿入するだけで接続でき、設備追加を最小限に留めている。

ソラグリPPHが描く次世代セキュリティ像、「一元管理」「異常検知」「気象連携」。
『ソラグリPPH』は単なるセキュリティ装置にとどまらない。遠隔地にある複数の発電所の状態を一元的にモニタリングし、「異常」「注意」「正常」のステータスをリアルタイムで可視化する機能を備えている。各デバイスの状態も「故障」「要現場確認」「要分析」など細かく分類されており、現場対応の優先順位付けを合理的に行える。
また、発電所の地域・施工会社・稼働開始時期などに基づいたブロック表示切り替えにも対応しており、O&M(運用・保守)業者の管理効率を大幅に向上させる。さらに、日射量・気温・積雪量などの気象情報との連携機能や、パワコンごとのエラー履歴の可視化など、設備の状態を多角的に把握する機能が順次拡充されている。
分散型エネルギーの拡大において「サイバーリスク」は避けて通れない課題である。『ソラグリPPH』はこの課題に正面から向き合い、発電所の安全性と運用効率を両立させる解決策として登場した。今後、太陽光発電だけでなく蓄電池やEV充電器など他分野への応用も視野に入れており、スマートグリッド社会の中核技術としての存在感を強めていくだろう。