商船三井、シャープ、そして国連国際移住機関(IOM)は、第9回アフリカ開発会議(TICAD 9)に合わせ、ケニア共和国における避難生活者支援と再生可能エネルギー活用に関する基本合意書を締結した。脆弱な地域社会の生活基盤を改善し、気候変動への適応力を高めることを目的とした国際協働だ。

避難生活者への基礎サービスを再生可能エネルギーで支える。
ケニア共和国では、紛争や環境変動の影響で避難生活を余儀なくされている人々が増加している。これらの地域では、電力や水といった基礎的なインフラが不足しており、人々の生活を支えるための持続的な解決策が急務とされてきた。
今回の基本合意書は、商船三井の海運ネットワーク、シャープの再生可能エネルギー技術、そして国連IOMの現地支援体制を組み合わせた包括的な取り組みだ。太陽光発電システムや蓄電設備を活用することで、医療や教育といった基礎的サービスの安定的な提供を目指す。
気候変動への適応と地域社会のレジリエンス向上。
今回の協力は単なるエネルギー供給にとどまらず、気候変動への適応を視野に入れた地域強化を狙っている。再生可能エネルギー技術を導入することで、停電リスクを減らし、現地の水処理や冷蔵保存といった重要なサービスの継続性を高める。
また、現地住民を対象とした技術研修も計画されており、設備の維持管理を担う人材の育成によって、支援を一過性に終わらせない仕組みづくりが進められる。地域自立を促進する“持続可能な開発”という視点がプロジェクト全体の核となっている。
ESG経営から広がる企業の国際的役割。
シャープは今回の取り組みを「世界の文化と福祉の向上に貢献する」という経営理念に基づいた活動と位置づける。エネルギーソリューション事業で培った技術を社会課題解決に応用することで、企業のESG経営をグローバルな文脈で具体化した形だ。
商船三井もまた、海運の枠を越えたサステナビリティ戦略を推進中であり、ケニアでの活動は新たな事業モデルを示唆している。国際機関と民間企業が連携し、それぞれの強みを融合させるこの事例は、途上国支援における新たな枠組みとして注目されるだろう。
TICAD 9を契機としたグローバル・パートナーシップ。
今回の基本合意は、2025年8月にパシフィコ横浜で開催されたTICAD 9に合わせて締結された。日本政府主導で行われたこの会議は、アフリカ諸国と国際社会のパートナーシップ強化を目的としており、民間企業が果たす役割の重要性も高まっている。
再生可能エネルギーを軸にした今回の取り組みは、エネルギー安全保障、気候変動対策、人道支援を同時に実現し得るモデルケースとなり得る。ケニアから始まるこの連携は、今後、他のアフリカ諸国への展開も視野に入れている。