渋谷のにぎわいを創出する公園や道路などの公共空間を観光資源として捉えている渋谷区。日本の観光と街の文化の創造に「THE TOKYO TOILET」はどう関わっているのだろうか。
今日はどこへ? 渋谷区で出会える THE TOKYO TOILET
100 年に一度の大規模な再開発を迎え、今まさに変わりゆく渋谷駅周辺。ここだけ見れば東京の最先端を象徴する商業施設やカルチャーの街といった顔が際立つが、渋谷区全体を回遊してみると、さまざまな表情を持つ公園や道路が多いことに気づかされる。国内外から連日多くの観光客が訪れている渋谷区として、こうした公共空間の魅力を支える「THE TOKYO TOILET」をどのように受け止めているのだろうか。
渋谷区観光協会の金山代表理事は、「この街に関わる者として、渋谷区は美しい、成熟している街だといった空気感やカルチャーを作っていきたいという思いはずっとありました」と切り出す。
「澤田副区長からもシビックプライドというキーワードが出ていらっしゃいましたが、渋谷区民を“渋谷区シビックプライドを共有する家族”と見立てたときに、その家族のもとには当然親戚やお客さんが関わってきます。家のトイレが汚い状態でゲストをお招きできないのと一緒で、街のトイレに対しても同じ感覚を持つ観点は当然持つべきです。また、渋谷区は企業や店舗など民間がドライブしてくれていますが、それら施設がいくら洗練されていても、街やトイレが汚くてそこにギャップがあるというのはどうかと思いますよね。
渋谷区民は職住接近の方も多いですし、やはり暮らしやすい街でありたいですし、私自身渋谷の未来デザインに関して“成長”から“成熟”に転換していくことの意義を各方面で発信しています」。
渋谷の街に対してさまざまなコンテンツを注入し、アプローチする金山代表理事独自の視点も秀逸だ。
「街のインフラにおいては、故障や老朽化などの問題が発生するとその箇所だけ修復して使い続け、いよいよ使えなくなったときにやっとしっかりとした予算が動くなど、対処療法になりがちです。医療も予防医学の発想にシフトしているように、もっと前のメンテナンスから見直していく必要があります。ソーシャルイノベーションを起こすには抜本的なアクションが欠かせない。今回のTHE TOKYO TOILETはそれができたことが最大の収穫だと考えます」と評価する。 「THE TOKYO TOILETが観光資源だというところからのアイデアでいうと、もちろん基礎メンテナンスは自治体が担当し続けますが、トイレは排泄のために利用するという単機能だけではなく、そこに例えばモバイルチャージャーを置く、観光客向けに荷物預かりをするなど複合機能化して、その収益でプラスアルファのメンテナンスなどを補っていくというモデルも必要なのかもしれません」。
Text Hiroko Ito / Photo Hiharu Takagi, Satoshi Nagare, provided by The Nippon Foundation