今日の、排泄物の状態は? ICTで見守るトイレと介護

高齢者がトイレを利用した際、便器に設置された小型センサが着座を検知し、排泄物の状態や量などを自動で記録する。また、長時間座ったままの姿勢でいると、介護スタッフにアラートを発信して声掛けにつなげられる。NECプラットフォームズが開発した、この「NEC サニタリー利用記録システム」は昨年の発売以来、既に全国の介護施設等で導入が進んでいる。

少子高齢化による高齢化社会が現実のものとなったいま、介護の現場では、人手不足や重労働といった問題が山積みだ。その状況を打破するためのソリューションの一つとして、本製品が開発された。発案者である三重野勤さんは、自身の入院体験をきっかけに、製品のアイデアを思いついたと語る。

「毎日の便通、排尿を看護師さんに報告するのですが、全ての患者に聞いて回って記録する様子を見て、作業負担の大きさに驚きました。また、治療のためとはいえ、自身のもっともプライベートな情報を他の人がいる前でつまびらかにしなければならないことにも抵抗感がありました。そこで、人間を介さずにAI が自動で記録を行えないだろうかと考えました」

三重野 勤 Tsutomu Mieno
NECプラットフォームズ
オプティカルネットワークプロダクツ事業部シニアエキスパート

三重野さんは退院後にいろいろ調べる中で、病院だけでなく、介護業界でも同じ課題があることに気づいた。実際に介護職員を対象とした調査では、「トイレ誘導のタイミングが難しい」「排泄状況が正確に把握できず、下剤投与やオムツ着用の判断に迷う「利用者のプライバシーが確保できない」といった意見が多かった。 そこで、ICTの利用により、介護者の負担を軽減して、なおかつ利用者の尊厳も守られるような見守りシステムを実現するべく開発に取り掛かった。

製品化にあたっては、ほとんどの既存の便器に簡単に取り付けできる高い汎用性と、プライバシーを侵害しない厳しいデータ管理、排泄物の分析精度にもこだわった。分析の精度に関しては、万を超えるデータを元にAI学習を行い、98%以上の精度(同社調べ)を実現した。実際に製品を使った介護施設のスタッフからは、概ね好評を得ることができた。そしてある施設では、職員一人あたりの作業量が1カ月で平均 22 時間も軽減できた。

製品を導入した特別養護老人ホーム「ぬくもりの郷」(北海道岩見沢市)の職員で、理学療法士の粟野晋太郎さんも、その効果を実感している。

「トイレの見守りは介護職員にとって、負担の大きい業務の一つです。このシステムは、トイレに取り付けるだけなので、導入のハードルが低いのが良いですね。利用者の尊厳を傷つけず見守りができることで、職員の精神的負担の軽減にもつながっています」 同社では今後、病院への導入や、独居生活を送る高齢者の見守りへの活用も視野に入れて本製品の普及を目指している。

NECサニタリー利用記録システム

トイレに設置したセンサが利用者の着座と退座、排泄状況を自動で検知して、介護職員の端末に通知する。個人識別センサを合わせて導入することで、共有トイレでの運用も可能。

導入メリット
○利用者のプライバシーを守りつつ、トイレの見守りができる
○目視に頼らず自動で排泄状況を記録できる
○排泄の介助等にかける介護者の労力を軽減できる

介護職員のスマホやタブレットに表示される画面。利用者のトイレ利用状況が把握できるほか、便の形状や色などがアイコンで示される。

Text Sou Shibano / Photo Hiharu Takagi