★ここが重要!

★要点
計測の会社が「開発を前に進める会社」へ。アンリツは、EV・自動運転向けのPower HIL(Hardware In the Loop)を核に、電源計測・シミュレーション技術を活用し、実車両試験と同等の精度でのEVバッテリーや駆動系の性能試験を可能にした。
★背景
世界は電動化・自動化・省人化の同時進行。安全保証のハードルは上がり、実車試験だけでは時間もコストも持たない。仮想空間と現場をつなぐHIL、電波の見える化、AI検査の導入で、「安全・安心」を量産する体制づくりが競争力になる。

“はかる”だけでは社会は動かない。アンリツは車載通信ユニットの通信制御シミュレーションで、実車両を用いたHILアプローチを採用。通信により収集されたさまざまなデータの統合や加工を通じて車載通信ユニットの「認知・判断・制御」をシミュレーションする。

EVの“心拍”を机上で再現——Power HILでバッテリーと駆動系を追い込む。

EVは、電池と駆動系の応答が“走り”の人格を決める。アンリツは電源計測とシミュレーションを束ね、実車同等の精度でバッテリー/インバータ/モータを結合評価できるPower HILを披露した。セル劣化や温度上昇、急加速時の過渡まで、路上に出る前に机上で再現。開発のボトルネックを「現物待ち」から「モデル駆動」へ切り替える発想だ。試走の回数を減らし、リスクの高いシナリオは仮想で潰す。カーボンニュートラル時代の開発速度の要になる。

ミニカーをモデルに展示されたPower HIL。通信から収集されたさまざまなデータを統合加工し、走行道路状況の変化を車載通信ユニットでシミュレーションする。

“認知→判断→制御”をHILSで丸ごとテスト——実車×通信×都市モデル。

自動運転は、センサーが集めた世界をどう理解し、どう動くかの勝負。アンリツは実車HILSを使い、車載通信ユニットが収集するデータを統合処理しながら、擬似都市での走行を繰り返す手法も紹介した。レーン変更、歩行者飛び出し、通信遅延……。一つずつ実路で試すのは非現実的だ。HILSなら、同じ“失敗の芽”を百通りに増幅できる。安全を確率から作りにいく。
自動運転の社会実装が進む中、街側の“受け皿”も変わる。通信と運行管理を束ね、AIが案内役になる公共交通の試みは各地で広がっている。技術と体験をつなぐ具体例はすでに生まれている。
計測は、見えないものを見える化して意思決定のスピードを上げる営み。創業以来、通信と計測の両輪で積み上げた歴史が、今の横断実装を下支えする。

5G通信で収集したデータを活用し、車載通信ユニットの「認知・判断・制御」をシミュレーションするPower HIL(Hardware In the Loop)。

Maintainable®︎NEWS EYE
統合KPIと“共有テスト街区”で、面で普及させる
◎横展開には、KPIの標準化と場づくりが効く。Power HILでの評価指標、HILSのシナリオ群、AI検査の精度・誤警報率、電波フィールドの品質——バラバラの指標を束ねた“安全ダッシュボード”がほしい。自治体やデベロッパーと連携し、衛星・5G・LPWAを束ねた“共有テスト街区”を常設できれば、中小も含めた試験コストは劇的に下がる。再エネや遠隔監視といった隣接領域の知見も巻き取れる。

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取材・撮影 内野一郎

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