★ここが重要!

★要点
江崎グリコと鴻池運輸が、乳業業界で初とされる「冷蔵機能付き燃料電池トラック(FCEV)」を共同導入し、2026年1月20日から岐阜工場発の学校給食用牛乳配送で運用を開始した。年間約29.9tのCO₂削減を見込むという。
★背景
物流の脱炭素は“最後に残る難所”だ。特に冷蔵・冷凍の温度管理は、車両の電力消費と安定稼働が直結する。IEAも、水素・燃料電池は長距離や重量物輸送など電化が難しい領域の選択肢として位置づけ、インフラ・供給網を含む実装を促している。

配送の脱炭素は、口で言うほど簡単ではない。走らせるだけなら電気でいい——その理屈が崩れるのが、冷蔵車と長距離、そして重い荷だ。江崎グリコと鴻池運輸が動かし始めた「冷蔵×燃料電池トラック」は、理想論ではなく現場の制約から逆算した一手である。しかも運ぶのは、学校給食の牛乳。子どもたちの日常ルートに、次世代インフラの芽が埋め込まれた。

“冷蔵車こそ難しい”に踏み込んだ。ゼロエミッションは荷台から始まる

今回のポイントは「燃料電池トラック」だけではない。冷蔵機能を積んだまま、現実の配送に入れた点だ。グリコは岐阜工場で製造した学校給食用牛乳を地元の小学校へ届けるルートで運用を開始し、ディーゼル比で年間約29.9トンのCO₂削減を見込むとしている。
冷蔵物流は、温度逸脱が許されない。だからこそ、安定稼働と補給のしやすさが命綱になる。航続距離や水素充填時間など、運用設計のディテールが“実用”を決める領域だ。ここを避けて脱炭素は語れない。

排出はゼロでも、評価はゼロにならない。問われるのは水素の「出どころ」

FCEVは走行時にCO₂を出さない。排出は水のみ——見た目は完璧だ。だが社会が見たいのは、排気口ではなくサプライチェーン全体の帳尻である。水素が化石燃料由来のままなら、排出は上流へ移るだけになる。
IEAが繰り返し強調するのも、ここだ。燃料電池トラックの普及は“車両”単体では起きず、水素供給の脱炭素化とインフラ整備がセットで進む必要がある。
つまり今回の導入は、気候対策でよくある「技術デモ」では終われない。水素の調達、ステーション運用、非常時の供給、保守——地味な運用の積み上げが、そのまま環境価値の信用になる。

給食ルートに載せた意味。“見える化”と環境教育が、導入コストを回収する

興味深いのは、配送先が小学校だという点だ。住宅地・通学路での運行を想定しやすく、静音性や低振動といった特性も語りやすい。
さらにグリコ側は、運用開始後に配送先の小学校で出前授業を行い、FCEVの仕組みや水素の特性を伝えるとしている。
これは広報ではなく、社会実装の技術だ。水素はインフラ産業であり、理解と合意がコストを左右する。子どもの日常に接続することで、「新しい車両」から「地域の当たり前」へ変わる速度が上がる。社会の受容性まで含めて設計している点が、今回の“現実解”である。

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