トイレは、日本の技術文化の代表。
「不特定多数の方が使用される公共トイレは、“汚れやすい”に加えて、“詰まりやすい“”雑に使われやすい”と、複合的マイナス要素があります。設置する製品は、それらのリスクを考慮しなければなりません」。
そう話してくれたのは、TOTOの増田さん。
「THE TOKYO TOILETは、前述の課題を払拭したい、かつ世界に誇る観光資源にしたいということで、当社の思いと全く一緒でした。我々の経験値も加え、ぜひ力になりたいと即答しました」。
プロジェクトスタートにあたり、増田さんは該当する渋谷区内の公共トイレの現地調査を実施。当初の想像を超えてはるかに汚い・くさい・暗い・怖いという“4K”である現実を目の当たりにして、よりメンテナンスのしやすさを考慮した製品の選定・導入の必要性を感じたという。
「当社における近年のパブリック製品の傾向としても、メンテナンスのしやすさは重要視しています。“汚れやすい”に加え、破損やトラブルの際に“雑に扱われやすい”課題を、床の清掃性に優れた壁掛式としたり、非接触で手洗いができる自動水栓を採用した洗面空間にすることで、衛生的で節水にも貢献します。また、流しっぱなしなどいたずら防止にもつながります」。
加えて、公共トイレは紙以外のものを流されるリスクがあるため“詰まりやすい”課題も。
「便器本体のコンパクト化はニーズとして多いものの、多少サイズ感が出てしまっても掃除口付の便器にした方が、異物が詰まった際に便器を取り外さずに、掃除口を開けるだけで除去できるなどメリットもあります。リスクを想定しながら、施工以降のことも考慮してレイアウトを考えました」。
リニューアル後、タクシーで現地確認に行ったときのこと。車中のドライバーとの会話で、「あそこのトイレは私たちもよく使うんですよ。キレイになってありがたいです」と言われたそうだ。そういった各方面からの反響に手ごたえを感じたとともに「、利用者側、管理側それぞれの視点において、公共トイレはまだまだ改善の余地がある」と新たな発見・収穫が多かったという。
「製品単体の機能向上だけでなく、IoTを含めて色々なテクノロジーとコネクトすることもできます。管理側に関しては、例えばトイレの電池やカードリッジといったパーツの寿命予告を、センサーなどちょっとした工夫を付加することでメンテナンスしやすく、あるいはメンテナンス不要で管理できる部分があってもいい。公共トイレにおいても、私たちのこれまでの経験値が生かせるという手ごたえを感じたプロジェクトになりました」。
Text Hiroko Ito Photo Hiharu Takagi