大成建設株式会社は、自然の形態を模したプランターに在来植物を植栽し、室内でも四季の移り変わりを感じられる室内緑化技術「T-バイオフィリックグリーン」を開発した。約2年半にわたる実証実験では、潅水量を大幅に削減しながらも植物の良好な生育を確認。自然景観を再現する新たな室内空間の創出が期待されている。

在来植物と自然形状プランターで屋内に四季を取り込む。

都市部のオフィスビルや商業施設において、植物による空間演出が注目を集めているが、これまでの室内緑化では、熱帯性の観葉植物を用いる例が多く、日本の自然がもつ四季の変化を表現するのは難しかった。また、プランターの人工的な外観も、空間全体の自然感を損なう要因となっていた。
こうした課題を背景に、大成建設は在来植物と自然形状のプランターを組み合わせた新技術「T-バイオフィリックグリーン」を開発した。使用する植物は、年間の温度変化が少ない南方地域にも分布し、同社技術センター(横浜市戸塚区)近傍にも自生する種類を中心に選定された。2年間の室内生育試験を経て、温度変化が小さい屋内環境でも安定的に育つ約60種が選ばれた。
特徴の一つは、ステンレス製プランターの外周部を樹脂混合土壌で覆い固化した上で、表土全体に植栽する構造にある。これによりプランター枠の露出を約98%削減し、より自然に近い景観を演出できる。また、この手法を用いた技術センターのエントランスホールにおける5㎡の植栽実験では、2022年から2024年にかけて良好な伸長と植被率を維持している。
さらに、本技術は潅水量の最適化によって環境負荷の軽減にも寄与する。具体的には生育に必要な水分量と保水性の高い土壌配合を組み合わせることで、従来手法に比べて約80%の潅水量削減を実現。湿度の上昇を抑えるとともに、省メンテナンスな緑化空間を可能とした。
大成建設のこの技術は「四季の移り変わりを体感できる室内緑化」としてグッドデザイン賞2023を受賞しており、今後はオフィスビルや商業施設への導入も進む予定。屋外の自然をそのまま室内に取り込むという新たな試みは、ウェルネスや働く環境の質を高める技術として注目が集まりそうだ。

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