株式会社電力シェアリング(本社:東京都品川区、代表取締役社長:酒井直樹)は、脱炭素社会の実現を目指す国民運動「デコ活」の一環として、再生可能エネルギーの需給同時同量化に向けたナッジ実証実験を開始することを発表した。今回の実証実験は、環境省からの委託を受け、個人需要家を対象に、行動科学の知見を活用し再エネ利用の行動変容を促進することを目的としている。
再エネ需給の時間帯別同時同量化を可能にする、「デュアルグリッド・メソドロジー」とは?
「デコ活」とは、「脱炭素につながる新しい豊かな暮らしを創る国民運動」の略称で、二酸化炭素(CO₂)削減の「Decarbonization(デカボナイゼーション)」と、環境に良い「エコ(Eco)」を組み合わせている。環境省では、こうした脱炭素に向けた取り組みへの自発的な参画を促すために、ナッジ(英語nudge:そっと後押しする)やブースト(英語boost:ぐっと後押しする)といった行動科学の知見を活用してライフスタイルの自発的な変革を創出する新たな政策手法を検証するナッジ実証事業を進めている。
再生可能エネルギー、特に太陽光発電の普及に伴い、電力の需給バランスの維持は難しくなっている。発電量が季節や天候に依存するため、再エネの「余剰」が発生する春秋の晴天時などには、電力需給の同時同量が困難となり、頻繁に発電所の出力調整が必要になる。この問題を解決するため、株式会社電力シェアリングは、需給の時間帯別同時同量化を可能にする「デュアルグリッド・メソドロジー」を開発した。
デュアルグリッド手法は、リアルな送配電網(リアルグリッド)と、地域内で再エネ需給の同時同量を達成するバーチャルグリッドを融合させるもの。リアルグリッドでは火力発電なども含めた電力需給の同時同量を維持しつつ、バーチャルグリッドでは、需要者と供給者の自発的な意思と選択により再エネ電力のタイムシフトと価値取引を行う。この手法により、地域内での再エネ電力の効率的な利用が可能となる。
ナッジ実証事業では、需要者と供給者に対してCO2排出係数を可視化し、行動変容を促す。具体的には、需要者には再エネ比率が高い時間帯への電力消費のタイムシフトを、供給者には再エネ比率が低い時間帯への発電のタイムシフトを促す。これにより、電力需給のバランスが取れ、再エネ電力の効率的な利用が可能となる。
また、実績に応じて金銭的インセンティブやナッジモデルによる非金銭的インセンティブを付与することで、行動変容を促す取り組みも進められている。このような手法を通じて、地域社会全体での環境配慮行動の成果を可視化し、コミュニティ内での協力促進を目指している。
デュアルグリッド手法による地域再エネ自給率の向上が期待される中、電力シェアリングは、国内外のナッジ実証事業を通じて、再エネの普及と需給バランスの最適化を進めていく。さらに、2024年度以降には、全国規模での実証実験拡大も検討されており、脱炭素社会の実現に向けた重要な一歩となる。
今後の取り組みとして、再エネ価値のアワリーマッチング取引を通じた再エネ電力の商用化や、地域電力小売会社の設立など、リアルマイクログリッド事業の発展が見込まれており、デュアルグリッド手法を基盤とした取り組みが進むことで、再エネ自給率向上と脱炭素社会の実現に向けた道筋が明確になることが期待される。