2024年11月20日、ビルメンヒューマンフェア&クリーンEXPO 2024の一環として、「ビルメンテナンス(以下BM)業界における生産性の向上に必要なこと ~アクションを起こすためのヒント~」をテーマにパネルディスカッションが行われた。BM業界を代表する企業経営者や資機材メーカーの関係者が登壇し、多角的な視点から業界課題とその解決策について活発に議論を交わした。
ビルメンテナンス業界の生産性向上に必要なこととは?
コーディネーターを務めたアスカ美装株式会社の森脇大統氏は、冒頭で「生産性向上」の一般的な定義とBM業界における独自の解釈について説明。「生産性は通常、労働時間あたりの付加価値や生産量を指すが、BM業界では単なる効率化ではなく、顧客に提供する快適で安全な空間こそが生産性の本質だ」と指摘し、同社が実施した働き方に関するアンケート結果を共有し、労働時間の柔軟性を高めた実験的な取り組みの成果を強調した。また、業界の現状を踏まえ、「これまで重視されてきたプロセス主体の考え方を、成果物(アウトプット)重視へと転換する必要がある」との見解を示した。
各社の取り組みと事例紹介
パネルディスカッションでは、各登壇者がそれぞれの立場から具体的な取り組みを紹介した。
今野圭祐氏(株式会社ハリマビステム)はDX(デジタルトランスフォーメーション)の推進を軸に、生産性向上への具体策を紹介。「清掃ロボットやクラウド管理システムの導入により、労働力不足や業務災害リスクに対応している」と語った。また、「テクノロジー活用だけでなく、作業員の負担軽減を意識した業務設計が重要」と述べ、現場での作業効率化事例を挙げた。
松本恵介氏(大成株式会社)は、全社でサービスをデザインすることで、社会に喜びと感動を提供するというミッションを掲げているとし、生産性向上を図るための新サービス、T-Bubbleシステムを紹介しつつ、人手不足解消を目的とした業務効率化の成果を報告した。
上瀧秀貴氏(山崎産業株式会社)はトイレの出入り口にタブレットを設置し、利用者の評価をもとに清掃や補充を行う事例を紹介し、データを活用し、現場の傾向を確認することの重要性を訴えた。
平田真博氏(株式会社テラモト)は、資機材メーカーとしての役割を次のように述べた。「BM業界が直面する課題を解決するため、作業の効率化を意識した製品開発に取り組んでいる」。また、製品開発の背景にある「現場作業員の声を反映するプロセス」の重要性を強調し、「現場の課題を深く理解することで、価値ある製品を提供できる」と語った。
議論の中で共通して指摘されたのは、「労働力人口の減少や技術革新による業界変革への対応」の必要性だ。森脇氏は、「限られた資源を最大限活用し、顧客価値を創出するための創造的な行動が求められる」と述べた。また、参加者全員が、ロボットやDXなどのテクノロジー活用が今後の生産性向上の鍵である点で一致した。
今回のディスカッションは、BM業界が直面する課題に具体的な解決策を提示し、新たな行動の起点となる重要な機会となった。登壇者の多様な視点は、参加者にとって実践可能なヒントを提供した。業界全体の変革が迫られる中、こうした議論が生産性向上への第一歩となることが期待される。