★ここが重要!

★要点
JR東日本が、グループの社員食堂などから出る廃食油をバイオディーゼル燃料に再資源化し、業務用車両の燃料として利用する取り組みを開始。まずは東北エリアで、廃食油の回収から再資源化、利活用までを地域内で完結させる「資源循環」と「地産地消」を両立したモデルを構築する。
★背景
運輸部門の脱炭素化は国家的な急務だが、鉄道インフラの保守・点検に使う業務用車両や特殊車両(軌陸車など)の電動化は技術的に難しく、化石燃料への依存が続いてきた。今回、身近な「廃食油」を代替燃料として活用するこの試みは、電動化が困難な領域の脱炭素化に向けた、現実的かつ創造的な解決策として注目される。

駅の社員食堂で使われた天ぷら油が、線路を保守するクルマの燃料になる。そんな、夢のような資源循環が現実になろうとしている。JR東日本が、グループ施設から出る廃食油をバイオディーゼル燃料として再利用する、新たな資源循環コンセプト『UPCYCLING CIRCULAR』を始動させた。これは、巨大な鉄道インフラが、自らの営みの中から新しいエネルギーを生み出し、地域と共に脱炭素社会へと走り出すための、力強い第一歩だ。

なぜ「廃食油」なのか?——電動化できない領域への挑戦

JR東日本は、2050年のCO2排出量「実質ゼロ」を掲げ、省エネ車両の導入などを進めてきた。しかし、その挑戦には大きな壁があった。線路の点検や工事に使う、道路と線路の両方を走れる「軌陸車」などの特殊車両だ。これらの車両は、その特殊性から電動化が難しく、ディーゼルエンジンなどの化石燃料に頼らざるを得なかった。 この課題を乗り越えるための切り札が、廃食油から作る「バイオディーゼル燃料」。軽油の代替燃料として使え、CO2排出量を削減できる。JR東日本は、グループの広大なネットワークの中から、この原料を自ら調達する道を選んだ。

軌陸車
廃食油の再資源化イメージ

東北で始まる「資源循環」と「地産地消」

最初の舞台は、東北。宮城県内にある新幹線総合車両センターや社員寮の食堂などから出る廃食油を、地元・宮城県の企業が収集・運搬し、バイオ燃料へと再資源化する。そして、その燃料を、JR東日本東北本部の業務用車両や軌陸車が使用する。 原料の発生から、再資源化、そして消費までが、すべて地域内で完結する。これは、エネルギーの「地産地消」であり、持続可能な「資源循環」そのもの。JR東日本グループの施設から出る廃棄物を、グループ内で利活用する『UPCYCLING CIRCULAR』というコンセプトを、まさに体現するモデルだ。

B5からB100へ。未来へのロードマップ

まずは、軽油にバイオ燃料を5%混合した「B5」からスタートし、安全性や安定稼働を慎重に検証していく。そして将来的には、混合率を100%(B100)に引き上げ、鉄道工事・設備保守におけるCO2排出量「実質ゼロ」を目指す。 東北での実証で得られた知見は、今後、首都圏や北陸・甲信越エリアへと横展開していく計画だ。日本の大動脈を支える鉄道会社が、自らの足元から生み出すクリーンなエネルギー。それは、脱炭素社会の実現に向けた、着実で力強いレールを敷いていく。

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