★ここが重要!

★要点
Tomoshi Bitoが初開催した「RICE MEDIA CAMP」は、学生が社会課題の現場を取材し、約60秒のショート動画として発信する実践型プログラムだ。300人超の応募から160人の高校生・大学生が参加し、最優秀賞には衣類廃棄問題をテーマにした高校3年生・青柳悠花さんの作品が選ばれた。
★背景
情報接触の主戦場がSNSやショート動画へ移る一方、社会課題は「難しい」「自分には遠い」と受け止められやすい。だからいま必要なのは、課題を教えることより、若い世代が“伝える側”に回る回路をつくることなのかもしれない。

社会課題は、深く語るほど届かない時代に入った。気候危機も、衣類廃棄も、地域衰退も、言葉を尽くすほど“難しい話”に見えてしまう。そこでTomoshi Bitoが始めたのが、学生が現場を取材し、約60秒のショート動画として発信する「RICE MEDIA CAMP」だ。要約ではない。軽薄化でもない。短い時間で、人の心を止め、問いを残す。その技術を、学生が現場で身につける。社会課題の伝え方が、いま教育のテーマになり始めている。

“受け取る側”から“伝える側”へ、学びの立場が反転した

RICEメディアは「社会課題の未認知を打破する」を掲げ、環境、教育、地域課題などをショート動画で発信するメディアだ。今回のCAMPでは、そのノウハウを学生に開き、企画、構成、編集、発信までを実践的に学ぶ機会として設計した。初開催にもかかわらず、定員160人に対して300人以上の応募が集まったという事実は、若年層の関心の高さを示している。
ここで起きているのは、広報体験ではない。社会課題を“教わる対象”から“自分で翻訳する対象”へ変える立場の反転。伝えるためには、理解し、整理し、誰に何を残したいのかを決めなければならない。学びは、発信した瞬間に深くなる。

最優秀賞が衣類廃棄だった理由。ファッションは、最も身近な社会問題だからだ

最優秀賞に選ばれたのは、衣類の廃棄問題をテーマにした高校3年生・青柳悠花さんの作品だった。ポップな曲調や小道具を使いながら、日常的に消費される服の裏側にある大量廃棄の現実を問いかける構成が評価され、再生回数約4万回、1,000超の「いいね」も後押ししたという。
衣類廃棄は、社会課題の中でも“自分ごと化”しやすいテーマだ。毎日着る。買う。飽きる。捨てる。だから視聴者は、遠い国の問題として逃げにくい。短い動画に向くのは、難しい課題ではなく、身近なのに見過ごされてきた課題なのだろう。

実際の動画はこちら→https://www.instagram.com/reels/DWQviaCk1Lz

“60秒”は浅いのか?むしろ入口としては強い

ショート動画は、しばしば「軽い」「断片的」と見られる。確かに、複雑な政策論や長い歴史を60秒で語り切ることはできない。だが、入口としての強さは別だ。RICEメディアは、若年層に届く社会・ニュース系メディアとして成長しており、視聴者の約半数が24歳以下だと紹介している。
課題は、深く伝える前に、まず見てもらうことにある。関心の扉を開くには、長さよりも、最初の数秒で「それ、自分にも関係あるかも」と思わせる編集が要る。福岡市とEarth hacksの事例でも、Z世代を主役にしたショート動画が、脱炭素を身近な話題へ落とし込む装置として機能していた。短いことは弱みではない。入口として設計されていれば、むしろ時代に合っている。

学生が現場を撮ることの意味。“社会課題のメディア教育”が始まった

RICE MEDIA CAMPの本質は、動画コンテストではなく、メディアリテラシーの実地訓練にある。社会課題を扱う以上、再生回数だけでは済まない。情報の正確性、現場への敬意、何を削り、何を残すかという編集判断。今回の審査項目にも、再生数だけでなく、オリジナリティや情報の正確性が含まれていた。
いまの若い世代は、最初からSNSの中にいる。ならば必要なのは「見るな」ではなく、「どう伝えるか」を学ぶ場だろう。社会課題の現場を、学生が自分の言葉と映像で翻訳する。そこではじめて、発信は承認欲求ではなく、公共性の訓練になる。

ローカル版で問われるのは、地域の物語を誰が語るか

主催側は次回を2026年8月に予定し、さらに地域の企業や自治体と連携したローカル版RICE MEDIA CAMPの開催も視野に入れているという。学生参加費を無料とし、現場提供企業・団体から費用を得る運営モデルも示されている。
ここから先で問われるのは、地方の産業や課題を、地域の若者がどう語るかだ。外から来たメディアが切り取る物語ではなく、その土地に暮らす世代が、自分の地域をどう編集するか。もしそれが成立すれば、RICE MEDIA CAMPは単なる教育プログラムではなく、地域の“次世代広報インフラ”にもなり得る。社会課題を60秒で伝える時代とは、短く話す時代ではない。自分の言葉で、最初の関心を生み出す時代のことである。

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