
★要点
JR東日本スタートアップとSpacewasp、博展が共創し、新木場駅高架下で地域資源の循環デザインを実証する。木くず等の植物性廃棄物を再利用し、情報ブースを制作。駅を単なる通過点ではなく、地域産業と来場者が交わる新たなハブへと変革する試みだ。
★背景
スクラップ&ビルドに依存する現代社会において、資源の有効活用と環境負荷低減は喫緊の課題といえる。大量に発生する植物性廃棄物を地域資源として捉え直し、駅空間を介して循環させることで、持続可能な社会の実現と新しい地域コミュニティの創出を目指す。
現代社会が直面する環境問題と地域活性化の課題に対し、JR東日本が新たな解を提示する。新木場駅高架下で始まる実証実験は、地域から出る植物性廃棄物を循環させ、駅を人と街、そして未来をつなぐ「循環ハブ」へと進化させる挑戦だ。駅は、ただ電車に乗降するだけの場所ではない。資源の有限性と環境負荷を真摯に受け止め、「持続可能な社会」を具体的に形にする試金石になるだろう。
新木場の「もったいない」を「新しい価値」へ、地域資源のアップサイクル
新木場、辰巳エリアは、日本有数の木材の街として栄えた。その陰で、日々大量に排出される木くずや木端といった植物性廃棄物の処理は、長年の課題だった。JR東日本もまた、線路沿線の雑草や間伐材の有効活用に頭を悩ませていた。この「もったいない」状況にメスを入れたのが、JR東日本スタートアップと、植物性廃棄物から内装空間を構築するSpacewasp、そして博展の三者共創プロジェクトだ。
2025年12月11日から13日にかけ、新木場駅高架下で「SHINKIBA CREATIVE HUB」という地域回遊イベントが開催される。ここで、地域から集められた植物性廃棄物が生まれ変わり、情報拠点「SCH EVENT GUIDE BOOTH」として展示される。切り株をコンセプトにしたブースは、まさに地域資源の循環を象徴する存在だ。来場者は、このブースを通じて、廃棄物が新たな素材へと転生するプロセスを学び、体験できる。


「通過点」から「交流拠点」へ、駅が高架下から新たな変貌を遂げる
本プロジェクトの狙いは、環境負荷低減だけにとどまらない。JR東日本が目指すのは、「駅の新しいかたち」だ。これまで単なる「通過点」として機能してきた駅を、地域事業者と来場者が交わり、交流する「ハブ」へと変貌させる。新木場駅高架下空間のリメイクはその第一歩。
高架下のデッドスペースが、現在の社会ニーズに合った循環と創造性のシンボルとして息を吹き返す。人が集い、会話が生まれ、持続可能な社会づくりのアイデアが育まれる。これは、地域コミュニティ再生のモデルケースとなる可能性を秘めている。この変革は、私たちの日常風景を大きく塗り替えるだろう。

Spacewaspの先進技術が加速するSXとDX――持続可能な内装空間の未来
本プロジェクトの推進力となるSpacewaspの技術は注目に値する。彼らは、様々な産業から排出される植物性廃棄物を原料に、100%植物由来の内装空間を提供する。サステナビリティ・トランスフォーメーション(SX)と、独自技術の3Dプリンターを核とするデジタル・トランスフォーメーション(DX)を組み合わせることで、スクラップ&ビルドに依存しないサーキュラーな内装空間を実現する。
ホテル、カフェ、レストラン、オフィスなど、内装空間が事業に不可欠なあらゆる分野で、Spacewaspの技術は新たな選択肢を提示している。環境負荷を低減しつつ、デザイン性と機能性を両立させる、「持続可能な未来」を体現するソリューションの数々。彼らの構想する、植物性廃棄物の原料化から製品化までを一気通貫で自動化した製造拠点を駅や高架下等の未利用地に設ける計画は、地域資源の循環をさらに加速させ、駅を人と技術が交わる最先端の拠点へと押し上げるだろう。

「SHINKIBA CREATIVE HUB」が描く、街の“かさねなおし”
実証実験の舞台となる「SHINKIBA CREATIVE HUB」は、新木場という街の歴史と未来を「かさねなおす」試みでもある。かつて木材産業で栄えた街が、再び「Creative」な発想と「Hub」としての役割を持って、社会に開かれようとしているからだ。
工場や企業の扉が開き、素材、技術、そして人々が交わることで、来場者は「見つける」「発想する」「つながる」という視点で街を再体験する。展示や物販、ワークショップ、食のコンテンツを通じて、新木場の新たな可能性を発見し、次の一歩を考える。これは、過去の遺産を活かしつつ、現代の課題に応える、地域活性化の先進的なモデルケースになるだろう。

駅からはじまる、循環型社会へのロードマップ
JR東日本スタートアッププログラムは、ベンチャー企業の斬新なアイデアとJR東日本の経営資源を融合させ、社会課題解決と新たな価値創造を目指す。Spacewaspとの共創は、その理念を具現化した好例だ。今回の実証実験を皮切りに、駅を地域と顧客をつなぐハブとする「新しい駅のかたち」の実現に向けたロードマップは着実に進む。
資源の枯渇、気候変動、地域社会の衰退。現代が抱えるこれらの複合的な課題に対し、新木場駅での挑戦は、具体的な解決策と希望の光を示す。駅は単なる交通インフラではなく、地域資源が循環し、人が集い、新たな価値が生まれる、生命力溢れる未来型拠点へと進化する。この小さな一歩が、やがて来るべき循環型社会を力強く牽引していくに違いない。
施設・イベント情報:
SHINKIBA CREATIVE HUB情報拠点「SCH EVENT GUIDE BOOTH」
設置期間:2025年12月11日(木)~13日(土)
実施時間:11:00~17:00
実施場所:新木場駅高架下
SHINKIBA CREATIVE HUB
実施期間:2025年12月11日(木)~13日(土)
実施時間:11:00~17:00(会場毎に1時間前後のばらつきあり)
実施エリア:新木場、辰巳エリア
特設サイトURL:https://shinkiba-creative-hub.com/
JR東日本スタートアッププログラム DEMODAY
開催日時:2025年12月4日(木) 13:20~18:00
開催場所:JR新宿駅 NEWoMan新宿5F LUMINE 0<ルミネゼロ>
参加応募URL:https://jresup-demoday12th-entry.peatix.com
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