★ここが重要!

★要点
ボードゲーム「Get The Point」が、SDGsの本質を“知識”ではなく“体験”として学ぶ新しい教育手法として広がり始めた。共通目標のある社会とない社会をゲームでシミュレーションし、対話と協力の重要性を体感させる。
★背景
気候危機、格差、分断――複雑化する社会課題に対し、SDGsは人類共通の指針として掲げられてきた。しかし教育現場では依然として「知識学習」に偏り、本質的理解を生む体験型学習の不足が指摘されている。

世界は今、共通の目標を持てるかどうかという歴史的な分岐点に立っている。気候変動、紛争、格差拡大。問題は国境を越え、単独の国家や企業では解決できない規模に膨らんだ。だがその一方で、持続可能な社会の実現を掲げたSDGsは、しばしば「覚えるべき17の目標」として理解されるにとどまっている。
こうした状況に一石を投じるのが、ゲームを通じて社会課題を体験的に学ぶ試みだ。大阪・関西万博に関連する「いのち会議」のアクションとして紹介されたボードゲーム「Get The Point」は、人類が“共通目標を持つ世界”へ移行できるかを疑似体験させる教育ツールとして注目されている。

SDGsは「覚えるもの」ではなく「体験するもの」 

SDGsは2015年、国連によって2030年までの国際目標として採択された。だが教育現場では、目標番号や内容を暗記する学習が中心となり、本来の意味である「世界共通の課題を共有する枠組み」が十分に理解されているとは言い難い。
問題は単純だ。社会の仕組みは、教科書だけでは実感できない。
「Get The Point」はこの壁をゲームで越えようとする。プレイヤーは社会の一員として行動しながら、共通の目標が存在する世界と、各自がバラバラに利益を追う世界の違いを体験する。
協力が生まれると社会は前進する。だが利害が衝突すると、全体の成果は急速に崩れる。プレイヤーはその構造を、自らの行動の結果として理解する。
教科書のように知識として教えるのではなく、ゲームを通して経験として学習できる点が強みだ。

自治体と連携する“社会課題シミュレーター”

このゲームは単なる教育教材にとどまらず、全国の自治体と連携し、地域課題に合わせたカスタマイズ版も展開されている。
すでに7自治体で導入され、学校教育や地域ワークショップで活用されている。地域の課題をゲームの中に組み込み、参加者が議論することで、現実の社会問題を自分事として考える場を生み出している。
近年、政策形成の分野では「シリアスゲーム」と呼ばれる手法が広がりつつある。ゲームを使い、複雑な社会システムを疑似体験させる方法だ。
都市計画、災害対策、気候政策など、多くの分野で活用が進んでいる。
「Get The Point」も、その潮流の一つと言えるだろう。社会を理解する手段が、講義から体験へと変わり始めている。

“触れるゲーム”が拓くインクルーシブな学び

もう一つの特徴は、アクセシビリティへの挑戦だ。
現在開発が進められている「Touch The Point」は、視覚障がい者も参加できる触覚中心のゲームとして設計されている。
カードやゲーム要素を「触る」ことで情報を理解し、視覚に頼らないプレイを可能にする。
さらに、視覚障がい者自身がファシリテーターとして学びの場を運営する仕組みも検討されている。
教育の対象としてではなく、主体として参加する設計だ。
インクルーシブ教育が求められる今、学びの方法そのものを問い直す試みでもある。

2050年へ――「共通目標の社会」は実現するか

20世紀は国家や企業が競争する時代となり、その結果、二度の世界大戦、環境破壊、深刻な格差が生まれた。
これを踏まえると、21世紀の課題は、「人類が共通目標を持つ社会へ移行できるかどうか」だといえるだろう。
例えば気候変動は典型的で、問題の温室効果ガスは国境を持たない。どこか一国の努力だけでは解決しない問題だ。
SDGsはその協調の枠組みとして生まれたが、実際はその理念だけで社会は動かなかった。
必要なのは、人々が「共通目標の意味」を実感すること。
ゲームは、その入り口になる可能性を持つ。
遊びながら社会を理解し、対話を生み、協力の価値を体験する。
未来を変えるのは知識ではない。行動だ。
そして行動を変えるのは、経験だ。
ボードゲームという小さなテーブルの上で、人類の未来をめぐる実験が始まっている。

■Official Website
https://www.sdgsgtp.com

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