有限会社東北エヌティエス(岩手県盛岡市、代表取締役:佐々木政聡)と高輝度蓄光塗料推進協会(会長:佐々木謙一)は、屋外路面環境に耐える厚さ約1.5mmの高輝度「RM蓄光シート」を共同開発した。2025年8月、宮崎県宮崎市青島の市道で日本初となる高輝度蓄光による路面施工を実施し、停電時でも避難路が視認できる津波避難誘導の実装に踏み出した。

工事不要・低コストで広がる“見える避難路”。非常時に真価を発揮する新インフラに期待。
沿岸部を中心に、夜間や停電時でも直感的に避難方向を示す「視覚的な道しるべ」の整備が求められている。従来、路面や床面への蓄光塗装は耐久・耐摩耗の面で課題があり、設置場所が限られていた。今回開発された「RM蓄光シート」は、JIS基準を上回る高いりん光輝度と耐候・防滑性能を兼ね備え、道路、駅構内、地下街、観光地など人流の多い場所にも適用可能な新しい避難誘導手段だ。電源を必要とせず、暗所で自ら発光するため、停電や災害時でも機能を発揮する。
宮崎市青島の市道で行われた初の路面施工は、2024年8月8日および2025年1月13日に発生した日向灘沖地震(最大震度6弱)を契機に、青島フィッシャーマンズ・ビーチサイドホステル&スパ(運営:株式会社マエムラ)が自治体の認可を得て実費で実施したもの。昨年9月には鹿児島県・屋久島空港の滑走路中央線で、LED灯の代替として高輝度蓄光塗料が採用された実績があり、今回は避難路の視認性向上を狙って「シート化」による路面適用へ踏み出した。施工はシートを路面に貼り付け、専用の防水塗料で仕上げるシンプルなプロセスで、大がかりな工事を伴わない。シートサイズは300×1000mmで、デザインの自由度も高い。
性能面では、促進耐候性(キセノンランプ法)1000時間試験、耐湿潤冷熱繰返し性40サイクル(960時間)試験をクリア。JIS Z9097(津波避難誘導標識システム)の蓄光性能測定で720分後8mcd/m2を確認しており、長時間の視認性を担保する。駅や大型商業施設、公園、イベント会場など人通りの多い路面・床面でも安全に使用でき、日常の維持管理は拭き取り中心で手間が少ない。さらに、LED照明と異なり電気代や交換コストがかからないため、イニシャル・ランニング双方の負担を抑えられる。
「RM蓄光シート」は、見知らぬ場所で方向感覚を失いがちな非常時に、あらかじめ設置された避難経路や誘導表示を即座に認識できる点が強みだ。特に夜間や照明の使えない状況で進むべき方向を明示でき、避難の遅れや混乱の抑止に寄与する。今後は、災害リスクの高い都市部の交通拠点や観光施設、地下空間などへの導入が見込まれ、非常時に真価を発揮する“光るインフラ”としての役割拡大が期待されている。
今回の市道での実装は、日本初の高輝度蓄光による路面施工という節目となった。工事性・耐久性・視認性を両立した「RM蓄光シート」の普及が進めば、地域の防災力は一段と高まり、災害時の安全確保に向けた新たなスタンダードづくりが加速するだろう。



