小大建築設計事務所の小嶋伸也・綾香夫妻が手掛けるマンションリノベーションブランド「一畳十間」が、住まいづくりに新たな視点を提供している。東京と上海に拠点を持つ夫妻は、和の要素と現代的なデザインを融合させ、日本家屋の良さを取り入れたリノベーションを実現。セルフブランディングによって、建築家が住まい手に身近な存在となることを目指している。
日本の手仕事や素材にこだわり、光との調和を追求。
建築家自らが手掛けるリノベーションブランド「一畳十間」の背景とは
玄関を開くと広がる和室空間、玉石の洗い出しが施された土間、視線の抜けるダイニングキッチン──これは小嶋伸也・綾香夫妻の自邸であり、「一畳十間」のコンセプトを具現化した最初のプロジェクトだ。彼らは2021年に「一畳十間」を立ち上げ、建築家が自らのブランドを持つという快挙に出た。このブランドは、家づくりのプロセスをわかりやすく伝え、住まい手に安心と共感を提供することを目指している。
「一畳十間」は、「一つの空間でも十通りの居心地が生まれる」という発想から名付けられたもの。従来の間取りに囚われず、障子や襖で必要に応じて空間を仕切り、和の要素を取り入れつつも現代的なライフスタイルに適応させるというコンセプトを掲げる。これは、空間全体が家族のつながりを感じられるよう設計されている。
彼らが選ぶ素材は、珪藻土や和紙、天然木材など、日本の風土に馴染む自然素材が中心だ。手仕事の温もりを感じられる素材を使い、住空間に心地よい光が広がるよう配慮している。障子や襖、欄間といった和の要素は、モダンなディテールで仕上げることにより、伝統的でありながら洗練された空間を演出する。
「一畳十間」では、素材や設備も自邸で試用したものを使用し、住まい手に自信をもって提案する。「ブランド化によって、コンセプトのブレを防ぎ、住み手にわかりやすい家づくりが可能になる」と綾香氏は語っている。
マンションリノベーションの新しい形、「一畳十間」の未来
設立から4年で、すでに9軒の施工実績を持つ「一畳十間」。都心でのプロジェクトを進める一方で、日本の家づくりに対する新しい視点を発信し続けている。「リノベーションのブランド化は、効率化だけでなく、家づくりの透明性と共感を生む」と小嶋氏が語る「一畳十間」は、マンションリノベーションの新しい形として多くの住まい手に新しい価値を提供していくと思われる。