★ここが重要!

★要点
次世代太陽電池として期待される「ペロブスカイト太陽電池」の実装に向け、公共施設等での実証や制度整備が進んでいる。
愛知県豊田市では2026年10月16日、株式会社トーエネック、豊田市、中部電力株式会社、中部電力ミライズ株式会社の連携により、鞍ケ池公園プレイハウス屋上にて株式会社アイシンが開発中のペロブスカイト太陽電池約1kWを活用した実証事業(令和8〜10年度)が発表された。外周柵と置き基礎架台の2方式を検証し、既設の結晶系太陽電池との並列接続も試みる。
国の導入支援も具体化している。環境省は10月15日、令和8年度「ペロブスカイト太陽電池の社会実装モデルの創出に向けた導入支援事業(設備等導入事業)」の二次公募を開始。フィルム型を対象に「耐荷重10kg/㎡以下相当」「1施設あたり出力5kW以上」「自家消費率50%以上」を公募要件に設定し、重量制約のある屋根への導入を後押しする。
さらに株式会社日本総合研究所が10月7日に公的機関向け実務ガイドを公表するなど、2040年約20GWの国内導入目標に向け、既存インフラを活用した再エネ実装の動向を追う。

★背景
カーボンニュートラルの達成に向けて太陽光発電の拡大が進められる一方、平地面積が限られる日本国内では、大規模開発に伴う森林伐採や土砂災害リスクをめぐり、地域社会との共生が重要な課題となっている。
そうしたなか、学校、体育館、配水池、公園施設など、都市部に存在する公共インフラが有望な設置場所として注目されている。しかし、既存の公共建築物のなかには構造耐力や耐震基準から耐荷重の余裕が小さく、重量のある従来の結晶シリコン型太陽電池の設置が困難な屋根も少なくない。
薄型・軽量で柔軟性を備えたペロブスカイト太陽電池は、従来のパネル設置が難しかった場所を含め、既存建築物の空きスペースを再エネ設備として活用するための新たな選択肢として期待されている。

見渡せば、都市には十分に活用されてこなかった屋根や屋上スペースが眠っている。
学校の体育館、公園の休憩所、自治体の倉庫、インフラの覆蓋施設。
耐荷重の制約や設置場所の制限から、太陽光発電の導入が見送られてきた場所も少なくない。
だが、その制約を緩和し得る技術の検証が現場で進みつつある。
薄く、軽く、曲面にも対応可能なペロブスカイト太陽電池。
都市公園の屋上施設を用いた施工方式の検証から、国が定めた具体的な導入支援の要件、そして公的機関向けの導入ガイドラインまで。
公共インフラを長期的に手入れし、再エネ設備として活用していくための社会実装の現在地を読み解く。

鞍ケ池公園の屋上で検証する2つの設置方式――豊田市とトーエネックらの実証

次世代太陽電池の特性を踏まえ、実際の公共施設で多様な設置方法を確かめる取り組みが始まっている。
株式会社トーエネックは2026年10月16日、愛知県豊田市、中部電力株式会社、中部電力ミライズ株式会社と連携し、豊田市鞍ケ池公園でペロブスカイト太陽電池の実証を開始すると発表した。
実証では、鞍ケ池公園のプレイハウス屋上に、株式会社アイシンが開発中のペロブスカイト太陽電池を合計約1kW設置する。事業期間は令和8年度から令和10年度までの3年間。
本実証では、「外周柵」への設置と「置き基礎架台」による設置の2方式を採用し、施工性や発電特性、経年変化などを検証する。また、既設の結晶系太陽電池との並列接続も行い、異なる種類の太陽電池を組み合わせた運用について知見を蓄積する。
市民が訪れる都市公園を実証の場とすることで、公共施設における次世代太陽電池の施工・保守技術の確立と、将来的な設置場所の拡大を目指す。

外周柵に設置 トーエネックプレスリリースより
置き基礎架台にて設置 トーエネックプレスリリースより

耐荷重10kg/㎡以下相当を対象に――環境省の導入支援事業に見る狙い

自治体や企業が保有する建築物への導入を後押しするため、国の支援制度も動き出している。
環境省は2026年10月15日、令和8年度「ペロブスカイト太陽電池の社会実装モデルの創出に向けた導入支援事業(設備等導入事業)」の二次公募を開始した。
本事業は、ペロブスカイト太陽電池の導入初期におけるコスト低減と継続的な需要拡大を目指すものだ。同種の建物への横展開が期待できる設置場所などへの導入を支援し、普及につながる社会実装モデルの創出を図る。
主な要件として、設置場所の耐荷重が10kg/㎡以下相当であること、1施設あたりの発電容量が5kW以上であること、需要地に近接し、発電電力の自家消費率が50%以上であることなどが示されている。
これまで重量などの制約から従来型太陽電池の導入が難しかった建築物も対象に、設置場所の選択肢を広げようとしている。ただし、具体的な施工にあたっては、既存建築物の構造安全性や防水性能、設置方法などの個別確認が不可欠となる。二次公募の受付期限は11月20日正午で、第1回締切は10月30日。地方公共団体に加え、民間事業者・団体も対象となる。

企画から維持管理までを6段階で整理――日本総研が示した導入推進ガイド

技術や補助制度が整いつつある一方で、自治体の現場担当者にとっては、新技術をどの施設に導入し、どのように調達・維持管理するかという実務上の課題が残る。
こうした課題に対応するため、株式会社日本総合研究所は10月7日、自治体などの公的機関を対象としたホワイトペーパー「公的機関担当者のためのペロブスカイト太陽電池導入推進ガイド ―技術・政策動向から導入検討の実務まで―」を公表した。
同ガイドでは、導入検討を「企画・構想」「対象施設・方式の選定」「基本計画・庁内合意」「発注・設計」「施工」「運用・維持管理」の6段階に整理。施設ごとの設置条件や太陽電池の種類に応じた選定方法、庁内の関係部門との調整、設計・施工時の責任分担など、具体的な検討事項を示している。
さらに、運用開始後の点検や部材交換、将来的な撤去・リサイクル費用まで視野に入れた、ライフサイクル全体での計画の重要性を指摘する。
単に発電設備を設置するだけでなく、既存の公共施設を長期にわたって維持・管理する取り組みとして位置づけた点に、このガイドの特徴がある。

建築物・設置条件に応じた太陽電池の候補選定フロー 日本総合研究所プレスリリースより
自治体における導入検討フロー(ペロブスカイト太陽電池(フィルム・ガラス型))日本総合研究所プレスリリースより

世界シェア約3割のヨウ素を活かす――2040年20GW目標に向けた基盤

日本がペロブスカイト太陽電池の開発・普及に注力する背景には、エネルギー安全保障上の強みがある。
主要原料の一つであるヨウ素について、日本は世界第2位の生産国で、世界生産量の約30%を占める。国内で産出されるヨウ素を活用できることは、供給網の強靱化につながる利点の一つだ。
政府は2040年までに国内で約20GWのペロブスカイト太陽電池を導入する目標を掲げている。
国内資源を活かした次世代太陽電池の普及は、温室効果ガスの排出削減に加え、エネルギー安全保障や国内産業基盤の強化にもつながると期待されている。

既存インフラの空間を手入れして活かす視点

自然環境への負荷を抑えながら再エネを導入していく上で、すでに街の中に存在する建築ストックの活用は重要な選択肢となる。
耐荷重や設置スペースの制約から導入を見送ってきた施設に、軽量で柔軟なペロブスカイト太陽電池を適材適所で組み込み、地域で使うエネルギーを生み出す。
鞍ケ池公園での設置方式の比較検証、環境省の支援事業、日本総研による実務プロセスの体系化。
これらの取り組みは、既存の公共インフラを気候変動対策の拠点として手入れし、社会実装を着実に進めていくための重要な一歩となる。

【参考】

株式会社トーエネック:ニュースリリース「豊田市鞍ケ池公園におけるペロブスカイト太陽電池の実証を開始」(2026年10月16日発表)
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000005.000184483.html

環境省:報道発表「令和8年度『ペロブスカイト太陽電池の社会実装モデルの創出に向けた導入支援事業(設備等導入事業)』の公募について(二次公募)」(2026年10月15日発表)
https://www.env.go.jp/press/press_05678.html

株式会社日本総合研究所:ニュースリリース「公共施設へのペロブスカイト太陽電池導入について検討の手順と留意点を体系化」(2026年10月7日発表)
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000217.000068011.html

関連資料:「公的機関担当者のためのペロブスカイト太陽電池導入推進ガイド ―技術・政策動向から導入検討の実務まで―」
https://www.jri.co.jp/MediaLibrary/file/pdf/company/release/2026/1007.pdf

経済産業省 資源エネルギー庁:「ペロブスカイト太陽電池の導入促進について」(2026年4月)
https://www.env.go.jp/content/000395593.pdf

あわせて読みたい記事

【猛暑に挑む日本の再エネ】「地熱」で支えるデジタルインフラと、「70℃の夏」に耐える次世代太陽電池――気候変動時代を乗り切る電力メンテナンス

【再エネは“つくる”から“使いこなす”へ】太陽電池、蓄電池、燃やさないバイオマスが示す、脱化石燃料時代の電力インフラ

積水化学、神戸空港でフィルム型ペロブスカイト太陽電池の実証実験を開始。