
★要点
シンク・ネイチャーは、100年以上にわたり火入れ、採草、放牧などによって維持されてきた「歴史の古い半自然草原」の全国分布を初めて地図化した。
国立環境研究所は、植物が発する微弱な光「太陽光誘起クロロフィル蛍光」を観測し、猛暑と乾燥によってカラマツ林の光合成とCO₂吸収が弱まる様子を捉えた。
JAMSTEC、高知大学、Ridge-iは、気候科学の知識、地域の適応計画、将来の気候予測データを組み合わせ、自治体の猛暑対策などを提案する地域気候特化型AIを開発した。
地図、光、数値、AI。
これまで見えにくかった地球の変化を、データとして捉える技術が進んでいる。
★背景
自然環境の変化は、ある日突然始まるわけではない。
草原の面積が少しずつ縮小する。森の光合成能力が低下する。猛暑日の頻度が上がる。こうした変化は、日々の暮らしの中では気づきにくい。
しかし、見えないものは、政策や企業経営、地域の予算でも後回しにされやすい。
国際社会では、昆明・モントリオール生物多様性枠組に基づき、自然の回復状況を指標によって追跡する仕組みが整備されている。企業や金融機関にも、TNFDなどを通じ、自然への依存、影響、リスク、機会を、場所とデータに基づいて把握することが求められ始めた。
だが、データを集めただけで自然は回復しない。
地図に草原が表示されても、野焼きや草刈りの担い手がいなければ維持できない。森林の異変を観測できても、管理方法や土地利用が変わらなければ回復しない。AIが対策を提案しても、予算、制度、人材、住民の理解がなければ実行されない。
自然を測る技術と、社会を動かす仕組み。
その両方が必要になる。
地球は、言葉を話さない。
草原が消えていく。
森が暑さと乾燥に耐え、光合成の速度を落とす。
地域の気温が上がり、これまでの暑さ対策では人を守り切れなくなる。
変化は起きている。
しかし、人間がそれに気づく頃には、生態系の劣化や気候災害が、取り戻すことの難しい段階まで進んでいることもある。
地図に残された過去の土地利用。
植物の葉から放たれる、目には見えないほど弱い光。
スーパーコンピューターが計算した、将来の気温と異常気象の確率。
最新のデータ技術は、自然や気候が発している小さな信号を読み取り始めた。
見えなかった場所を、見えるようにする。
変化が深刻になる前に、異変を見つける。
専門家だけが理解できる数字を、自治体や企業が使える対策へ翻訳する。
データは、地球を守る答えそのものではない。
だが、何が壊れ、どこから手を入れるべきかを知るための診断技術になる。
問われるのは、地球をデータにできるかではない。
見えた異変に対し、私たちは行動を変えられるのか。
見えなければ、守る場所を決められない
自然保全には、いつも優先順位の問題がある。
限られた人員と予算を、どの場所へ投入するのか。
どの生態系が、より失われやすいのか。
どこを開発から守り、どこを再生し、どこで維持管理を続けるのか。
判断には、自然の現在地を示すデータが必要だ。
2022年に採択された昆明・モントリオール生物多様性枠組には、各国や地域の進捗を追跡するモニタリングの仕組みが組み込まれている。自然を回復させるという目標を、宣言だけで終わらせず、指標によって確認するためだ。
企業の自然関連情報開示を進めるTNFDも、自然への依存や影響を、事業拠点、調達地域、生態系など場所ごとに把握することを重視している。
だが、自然のデータには、まだ大きな空白がある。
観測されていない場所。
記録されていない生きもの。
過去の状態が分からない土地。
データが不足すれば、自然の価値が低いのではなく、単に価値を説明できない場所が生まれる。
見えない自然は、存在しない自然として扱われかねない。
自然を可視化することは、土地を数字で支配するためではない。
失われる前に、その存在へ気づくためである。

100年以上続く草原を、全国地図にする
シンク・ネイチャーの研究チームは、100年以上にわたって草本植生が継続してきた土地を「歴史の古い半自然草原」と定義し、その分布を全国規模で地図化した。
複数の時期に作られた地図資料や統計データを統合し、1ヘクタール以上の古草原を抽出した。
その結果、現存する古草原は2,654区画。総面積は58,872ヘクタールだった。
日本の国土面積の、わずか0.16%である。
情報サイト「日本の古草原ウォッチ」では、古草原の分布を地図上で確認できる。
古草原そのものの位置だけではない。半自然草原の分布密度、植物や動物を対象とした生物多様性上の保全優先度など、複数の情報を重ねて見ることができる。データは、自然共生サイトの候補地選定、環境影響評価、保全や再生事業の計画に使うことが想定されている。
草原というと、木のない自然な土地を思い浮かべるかもしれない。
しかし、日本に残る半自然草原の多くは、人が火を入れ、草を刈り、家畜を放牧することで保たれてきた。
自然と人間の共同作品である。


草原は、放置すれば守れる自然ではない
森林を伐採せず、土地へ手を入れなければ、自然は守られる。
そう考えると、草原の保全は少し分かりにくい。
日本の温暖で雨の多い地域では、人が管理をやめた草原の多くが、やがて藪や森林へ変わっていく。
森林が増えること自体が、必ずしも悪いわけではない。
だが、長い時間をかけて草原環境に適応してきた植物、昆虫、鳥などにとっては、生息地が失われることになる。
草原を守るには、何もしないことではなく、適切に手を入れ続ける必要がある。
火入れ。
採草。
放牧。
外来植物の管理。
野焼きの前に火が広がるのを防ぐ輪地切り。
しかし、その作業を担ってきた農家や地域住民は減っている。
地図によって草原の場所が分かっても、地図は草を刈らない。
AIは、野焼きの火を管理しない。
自然を可視化する技術が示すのは、守るべき場所だけではない。
その場所を守る人と、作業と、費用が必要であるという現実だ。
古草原のデータを保全へつなげるには、地域の担い手、自治体、研究者、企業、観光、農畜産業を結ぶ必要がある。
自然を守るデータは、管理する人を支える制度と一体でなければならない。
古い地図は、土地の記憶を保存している
古草原の地図化で興味深いのは、最新の衛星画像だけを使った研究ではない点だ。
現在の土地を見ただけでは、その草原が10年前に生まれたのか、100年以上前から続いているのかは分からない。
同じように草が生えていても、土地が持つ歴史は異なる。
長い間、草原として維持されてきた場所には、短期間で成立した草地とは異なる植物や生きものが残る可能性がある。
古地図、地形図、統計資料、現在の地理情報。
異なる時代のデータを重ねることで、土地の「履歴」が見えてくる。
企業のサプライチェーンや土地利用でも、現在の緑地面積だけを見ればよいわけではない。
そこに以前、何があったのか。
森林だったのか。湿地だったのか。農地だったのか。長く続く草原だったのか。
自然資本の評価は、現在の写真だけでなく、土地の記憶を読む作業でもある。
森林のSOSを、微弱な光から読み取る
草原の位置を地図で捉える一方、森林の働きを「光」で捉えようとする研究も進んでいる。
植物の葉に含まれるクロロフィルは、太陽光のエネルギーを使って光合成を行う。
受け取ったエネルギーのすべてが、光合成に使われるわけではない。
使い切れなかったエネルギーの一部は、赤色から近赤外線の範囲にある微弱な光として外へ放出される。
これが「太陽光誘起クロロフィル蛍光」、SIFである。
人間の目で見ることは難しい。
だが、高性能な分光観測機器を使えば、離れた場所から捉えられる。
国立環境研究所は、山梨県富士北麓のカラマツ林に設置した観測タワーで、2021年からSIFの分光観測を続けている。北海道大学の協力も得ながら、森林の光合成とCO₂吸収の状態を遠隔で把握する研究だ。
森の葉を一枚ずつ測らなくても、森林全体の働きを光から推定する。
いわば、森の健康診断である。

※図は論文のデータをもとにコラム記事のために作成されたオリジナル画像

※図は論文のデータをもとにコラム記事のために作成されたオリジナル画像
猛暑になると、森も働けなくなる
研究チームは、2022年7月から8月の観測データを使い、短期間の猛暑がカラマツ林へ与えた影響を分析した。
特に注目したのは、8月初旬に続いた5日間の晴天期間だった。
猛暑期間の後半になると、日中のSIFは猛暑前より低下した。同時に、森林の光合成によるCO₂吸収速度、総一次生産も減少していた。
約3週間のデータを分析すると、SIFは約27℃、総一次生産は約22℃の最適温度を超えた後、最高気温31℃へ近づくにつれて低下する傾向を示した。
原因の一つとして考えられるのが、大気の乾燥だ。
植物は、葉の気孔からCO₂を取り込み、水蒸気を放出する。
空気が乾燥すると、植物は水分を失わないように気孔を閉じる。
水は守れる。
しかし同時に、光合成に必要なCO₂も取り込みにくくなる。
暑く、乾燥するほど、森は水分を守るために活動を抑える。
森も、暑さの中で休まなければならないのだ。
森林は、無限にCO₂を吸収する装置ではない
森林は、気候変動対策の重要な担い手として語られる。
木を植える。森林を守る。CO₂を吸収する。
だが、森林は機械ではない。
高温、乾燥、病害虫、火災、土壌の劣化などによって、その働きは変化する。
気温が上がっても、森林が同じ速度でCO₂を吸収し続けるとは限らない。
むしろ、暑さと乾燥が一定の水準を超えれば、吸収能力が弱まる可能性がある。
森林が弱れば、大気中に残るCO₂が増える。
CO₂が増えれば、さらに温暖化が進む。
暑さが森林を弱らせ、森林の弱まりが温暖化を加速させる。
こうした悪循環を早く見つけるためにも、森林が枯れた面積だけでなく、光合成という「機能」を観測する必要がある。
緑に見えるから、健康とは限らない。
葉がついていても、森はすでに働きを落としているかもしれない。
自然を守るには、面積だけでなく、自然がどれだけ機能しているかを測る必要がある。
森の光を、宇宙から観測する
SIFは、地上の観測タワーだけでなく、人工衛星からも捉えられる。
国立環境研究所などが運用に関わる温室効果ガス観測技術衛星GOSATシリーズでも、SIFを観測し、地球規模の光合成活動の推定へ応用できる。
衛星には、広い範囲を繰り返し観測できる強みがある。
人が簡単に入れない森林。
国境をまたぐ生態系。
広大な農地。
干ばつや熱波に襲われた地域。
地上観測だけでは追い切れない変化を、宇宙から把握できる。
ただし、衛星データにも限界がある。
雲、地形、森林の構造、観測する時間、機器の精度によって、データの見え方は変わる。
衛星が示す広域的な変化と、観測タワーや現地調査による詳細なデータを組み合わせる必要がある。
宇宙から見ることと、現場で見ること。
どちらか一方では足りない。
気候データを、自治体の行動へ翻訳するAI
自然や気候のデータは、量が増えるほど扱うことが難しくなる。
気温、降水量、湿度、風、土地利用、人口、健康被害。
将来予測には、異なる条件で計算した多数のシミュレーションが使われる。
専門家でなければ、そのデータを読み、具体的な施策へ変えることは簡単ではない。
JAMSTEC、高知大学、Ridge-iの共同研究チームは、気候科学の専門知識と地域の将来予測データを利用できる「地域気候特化型LLM」を開発した。
開発者によれば、地域の気候予測データを直接検索・抽出し、適応策を定量的に提案できる大規模言語モデルは世界初だという。
モデルの基盤には、日本語に強いオープンソースLLMが使われた。
国立環境研究所の気候変動適応情報プラットフォーム「A-PLAT」に登録された338編の学術論文や、IPCCの評価報告書などを追加学習。さらに、地域の適応計画と、将来の極端な気象を確率的に評価する気候予測データベース「d4PDF」を検索できる仕組みを組み合わせた。
AIへ質問すれば、気候に関する一般論を返すだけではない。
地域の予測データを探し、数値を取り出し、既存計画と結びつけて、具体的な対策を提案する。
気候データを、自治体が使える言葉へ翻訳するAIである。

利用者はチャットボット型アプリケーションに対して自然言語で指示や質問を入力し、必要に応じて定量的な気候予測データや過去の地域適応策が格納されたデータベースから、将来の予測値や現在の適応策などの関連する文脈情報を意味検索・抽出する。システムは、抽出された情報と質問を組み合わせてLLMに指示(プロンプト)を送り、専門知識と予測データに基づいて生成した回答を利用者へ提示する。(JAMSTEC・高知大学・Ridge-i)

気候学に関する専門知識のテストにおいて、本研究で開発したモデルが、ほぼ全ての分野においてSwallow 70BやGPT-4oなどの汎用LLMの正答率を上回る高い性能を示した。(JAMSTEC・高知大学・Ridge-i)
熊谷の猛暑対策を、確率から考える
研究チームは、極端な暑さで知られる埼玉県熊谷市を対象に、概念実証を行った。
AIは、将来の気温上昇予測を気候データから抽出。熊谷市の適応計画やガイドラインを参照し、熱中症患者の増加数を推定した。
その上で、グリーンカーテンや休息所などを、どの程度増やす必要があるかを計算過程とともに提示した。
将来予測は、一つの数字ではない。
比較的影響が小さい場合。
平均的な場合。
厳しい影響が出る場合。
複数の可能性を示し、それぞれに必要な対策を検討する。
これは、未来を正確に言い当てるための技術ではない。
不確実な未来に対し、何を準備するかを考える技術である。
気温が何度上がるかを待ってから、休息所をつくるのでは遅い。
予測に幅があることを前提に、段階的な対策を考える。
気候適応とは、正解が分かるまで動かないことではない。
複数の未来に備え、状況を見ながら計画を更新することなのだ。
AIは、行政の責任を引き受けない
地域気候特化型AIには、専門人材の少ない自治体や中小企業の気候適応を支える可能性がある。
だが、AIが対策を提案すれば、行政の仕事が終わるわけではない。
グリーンカーテンを増やすのか。
街路樹を植えるのか。
クーリングシェルターを整備するのか。
高齢者の家を訪問するのか。
学校の空調を更新するのか。
屋外労働の時間を変えるのか。
同じ猛暑対策でも、必要な費用、効果、利用者、維持管理の負担は異なる。
AIは、選択肢と根拠を示せる。
しかし、予算を決めることはできない。
どの地域を優先するか、誰の命や暮らしを優先するかという社会的な判断も引き受けない。
また、学習した論文や計画に偏りがあれば、提案も偏る。
過去に十分なデータが集められなかった地域や、制度から取り残されてきた人々のリスクは、AIにも見えにくい可能性がある。
AIを使うほど、人による確認が重要になる。
計算過程は説明できるか。
参照したデータは適切か。
現地の状況と合っているか。
地域住民の経験や意見は反映されているか。
AIは意思決定者ではない。
より良い意思決定を助ける道具である。
データの精度だけでなく、信頼をどうつくるか
自然や気候のデータへの需要は、急速に高まっている。
一方、TNFDは、自然の状態を示すデータについて、品質や信頼性への懸念が依然として大きいと指摘している。自然データを収集する研究者や地域の観測主体に、十分な資金が届いていないことも課題だ。
地図が間違っていたら。
センサーが異常値を示したら。
AIが古い計画を参照していたら。
自然保全や防災の投資判断を誤る可能性がある。
データを使う社会には、データを検証する仕組みが必要だ。
誰が収集したのか。
どの方法で測ったのか。
どの時期のデータなのか。
どの程度の誤差や不確実性があるのか。
更新されているのか。
異なるサービス間で比較できるのか。
透明性がなければ、データは共通言語ではなく、新しいブラックボックスになる。
自然を測る技術が高度になるほど、その測り方を社会へ説明する責任も重くなる。
地域の知恵を、データの外へ置かない
データには、数字になりにくいものがある。
草原へ火を入れるタイミング。
風向きや土の乾き方。
森の葉の色や、鳥の声の変化。
地域の高齢者が記憶する、昔の水害や暑さ。
農家や林業者が感じる、季節のずれ。
こうした地域の知識は、必ずしもデータベースに入っていない。
だからといって、科学と地域知のどちらかを選ぶ必要はない。
衛星画像で異変を見つけ、現地の人が確かめる。
AIが対策案を示し、自治体職員や住民が実現可能性を検討する。
古地図で草原の歴史を確認し、現在の管理者から作業方法を聞く。
科学的データと、人が土地の中で積み重ねてきた経験。
両方を結ぶことで、自然の状態をより深く理解できる。
地球をデータにすることは、自然や地域の声を数字で置き換えることではない。
異なる知識をつなぐための土台をつくることである。
観測から維持管理までをつなぐ
3つの取り組みには、共通する流れがある。
まず、観測する。
古地図や地理情報から、長く残る草原を見つける。
微弱な光から、森の光合成の変化を捉える。
気候モデルから、将来の猛暑リスクを読み取る。
次に、診断する。
どの草原の保全を優先するのか。
どの森林が暑さや乾燥に弱っているのか。
どの地域で、どの程度の気候適応が必要なのか。
その後に、計画がある。
保全区域を定める。森林管理を見直す。休息所や日陰を増やす。
だが、本当に重要なのは、その先だ。
実行する。手入れを続ける。結果を測る。
うまくいかなければ、計画を変える。
「観測→診断→計画→実行→維持管理→再評価」
この循環がつながって、初めてデータは自然を守る力になる。
観測装置を設置したこと。
地図を公開したこと。
AIを導入したこと。
それ自体を成果にしてはならない。
データは、行動の入口である。
地球の修理は、診断から始まる
壊れた機械を修理するとき、最初に行うのは部品交換ではない。
どこが壊れ、なぜ動かないのかを調べる。
自然も同じだ。
草原が減っている。森林が弱っている。猛暑被害が増えている。
現象だけを見て対策を始めれば、原因を取り違える可能性がある。
草原を守ろうとして、すべての樹木を取り除けばよいわけではない。
森の光合成が低下したからといって、すぐに伐採すればよいわけでもない。
猛暑だからと、すべての地域に同じ対策を置けばよいわけではない。
場所によって、歴史も、生態系も、人の暮らしも異なる。
だから、測る。
比較する。
地域ごとの違いを知る。
必要な手入れを選ぶ。
データは、地球を人間の思いどおりに管理するための道具ではない。
人間が見落としてきた変化に気づき、自然の働きを邪魔しない方法を考えるための道具である。
地球の修理技術は、巨大な装置や新素材だけではない。
正しく状態を知る技術もまた、修理の一部なのだ。
見えた地球に、責任を持てるか
かつて、自然は「分からないもの」だった。
どこに、どの生きものがいるのか。
森がどれだけCO₂を吸収しているのか。
数十年後、地域の気温がどう変わるのか。
分からないことが、行動しない理由にもなった。
いま、技術はその言い訳を少しずつ減らしている。
100年以上続く草原の場所が、地図に表示される。
森の光合成が弱まる様子が、微弱な光として捉えられる。
地域の将来気温と必要な対策が、AIによって提示される。
見えるようになった。
だから、責任も生まれる。
地図に映った草原を、開発するのか、守るのか。
弱っている森へ、どのような手を入れるのか。
猛暑のリスクが高まる地域で、誰を、どのように守るのか。
データは中立に見える。
しかし、データをどう使うかは中立ではない。
自然を守るためにも使える。
開発の効率を上げるためにも使える。
対策の優先順位をつくることは、守る場所を決めると同時に、後回しにする場所を決めることでもある。
地球をデータにできるか。
その問いは、もう技術だけの問題ではない。
見えた地球に対し、社会がどのような責任を引き受けるか。
本当の問いは、そこにある。
発表・研究元
■株式会社シンク・ネイチャー
「日本全国の『歴史の古い草原』分布を初めて地図化」
2026年7月30日発表
https://think-nature.jp/news/historically-old-grasslands/
■PR TIMES
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000063.000100724.html
■日本の古草原ウォッチ
https://grassland.think-nature.jp/
■国立環境研究所・地球環境研究センター
「猛暑が森林の光合成を弱めることを、クロロフィル蛍光観測で確認」
2026年7月発行
https://cger.nies.go.jp/cgernews/2026/421002.html
■JAMSTEC・高知大学・株式会社Ridge-i
「気候変動適応策の立案を支援する地域気候特化型AIを開発」
2026年7月2日発表
■JAMSTEC
https://www.jamstec.go.jp/j/about/press_release/20260702_3/
■高知大学
https://www.kochi-u.ac.jp/news/20260702/35235/
FAQ
Q. 古草原とは何ですか?
A. 火入れ、採草、放牧など、人による管理が長期間続くことで維持されてきた半自然草原である。今回の研究では、100年以上にわたって草本植生が継続してきた場所を「歴史の古い半自然草原」と定義している。
Q. なぜ古草原を地図化する必要があるのですか?
A. 古草原の分布が分かれば、保全を優先する場所、自然共生サイトの候補地、環境影響評価が必要な地域などを検討しやすくなる。過去の土地利用を含め、草原の歴史的な価値を把握する目的もある。
Q. 草原は、人が管理しなければ自然に守られるのではないのですか?
A. 日本の多くの半自然草原は、火入れ、採草、放牧などによって維持されてきた。管理をやめると藪や森林へ変わり、草原に依存する植物や昆虫の生息地が失われる場合がある。
Q. 太陽光誘起クロロフィル蛍光とは何ですか?
A. 植物が受け取った太陽光のうち、光合成に使われなかったエネルギーの一部が、微弱な光として放出される現象である。SIFとも呼ばれ、植物の光合成活動を遠隔から推定する手掛かりになる。
Q. 猛暑になると、森林の光合成はなぜ低下するのですか?
A. 高温と乾燥によって植物が水分を失いやすくなるため、葉の気孔を閉じる。気孔を閉じると光合成に必要なCO₂も取り込みにくくなり、光合成やCO₂吸収が低下することがある。
Q. 森林の光合成は、人工衛星から観測できますか?
A. SIFは、地上の観測装置だけでなく、GOSATシリーズなどの人工衛星からも観測できる。広い範囲の森林や農地の光合成活動を把握する技術として研究が進んでいる。
Q. 地域気候特化型AIとは何ですか?
A. 気候科学の専門知識、地域の適応計画、将来の気候予測データを組み合わせ、自治体や企業の気候変動適応策を支援する大規模言語モデルである。
Q. 一般的な生成AIと、何が違うのですか?
A. 一般的な文章知識だけでなく、気候学の論文、IPCC報告書、地域計画、定量的な気候予測データを検索し、根拠となる数値や計算過程とともに対策を提案できる点に特徴がある。
Q. AIが提案すれば、自治体はそのまま実行してよいのですか?
A. AIの提案は、意思決定の参考情報である。使用したデータ、計算条件、地域の実情、費用、住民への影響を人が確認し、最終的な判断を行う必要がある。
Q. 自然や気候をデータ化する際の課題は何ですか?
A. 観測されていない地域や生きものがあること、データの精度や更新頻度が異なること、モデルに不確実性があることなどが課題となる。現地調査や地域の知識と組み合わせ、継続的に検証する必要がある。
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