社会貢献ジェネレーションとトイレ建築への挑戦。

「当社でいいのか?…いや、当社だからこそ具現化できる」。 THE TOKYO TOILETのプロジェクト内容を初見した際、担当者は二つの感情を交錯させながらも、受諾したいという強い気持ちを抱いたそうだ。

「当社で“公衆用トイレ”というのはこれまでに造ったことがなく、同時に小規模施設を造ることや公共施設の施工にもあまり取り組んでいません。

ただ、多くの住宅・建築物を手掛ける中で複雑なスキームの案件を取り扱ってきた経験、実現のリソースは持っていますから、逆にこのプロジェクトを成し遂げられるのは当社だと思いました」そう話す大和ハウス工業の更科さんは、同プロジェクト立ち上げに携わっていた前任者から引き継ぎ、全 17トイレの施工を遂行している。

同プロジェクトに対し社員の中から営業や技術者を募ったところ、「新規事業に挑戦してみたい」「世界的なクリエイターと仕事がしてみたい」など意欲的な若手社員や女性社員が多く手を挙げ、3つの事業部を横断したプロジェクトとして動き出したという。

「若手社員にとっては、著名な建築家と関わることができる点もやりがいだったでしょう。その一方で、クリエイティブなデザインを最大限活かしながら、敷地や公共施設としての制約がある中でいかに設計・施工して具現化していくかが問われ、当社としてもそこは腕の見せ所でした」。

建築物とそのアフターメンテナンスは切っても切り離せない。THE TOKYO TOILETに関しても同様で「、部品は交換しやすいものにして、シール材を少なく「」露出させた方がメンテナンスしやすい」といった具体的な提案を出しながら、一つ一つ個性の全く異なるトイレが完成した。

眠っている公共施設を復活させたい。THE TOKYO TOILETの背景にはそんな思いもある。 「非常に共感しました。当社もゼネコンでありデベロッパーとして多くのモノづくりに取り組んできましたが、現代は“作って終わり”ではなく、いかに持続的に維持管理していくか“作った責任”が問われています。当社も数年前から既存建物の買取再販やリフォームにも注力していますし、社会や地域に貢献するという意識は非常に高いものがあります。THE TOKYO TOILETで得た知見や社会貢献の一助となった過程を当社内でも活かしていくことができたら、とても大きな価値となるでしょう」。

同社では、20代、30代の若手中心に構成されたプロジェクトチームが、世界的なクリエイターがデザインした全17のプランを基本・実施設計に落とし込み、施工まで担った(2020年11月撮影)。
各建築家のデザインを最大限生かしながら、性別、年齢、障がいの有無を問わず、誰もが快適に使用できる、使う人に寄り添った施工が行われた。
大和ハウス工業  執行役員 東京本店長
更科雅俊

Text Hiroko Ito Photo Hiharu Takagi