株式会社ARI(東京都渋谷区)は横浜市立大学医学部麻酔科学教室、医療法人横浜未来ヘルスケアシステム戸塚共立第2病院と共同で、AI技術を活用し全身麻酔中の患者状態をリアルタイムで予測するシステムの開発を進めている。

AI技術で全身麻酔管理に革新

全身麻酔患者の安全性を向上させるため、AI技術が新たな展開を見せている。今回の共同研究では、麻酔中のバイタルサインをもとに、将来の状態をAIが予測し、リアルタイムで麻酔科医に情報を提供するシステムの開発が進められている。このシステムにより、麻酔中のリスクを予測し、適切な医療処置を行うことが期待されている。
日本は高齢化に伴い、手術数が増加し、合併症を伴う手術患者も増えている。これに伴い、麻酔技術も進歩し、安全性が向上してきた。しかし、今後の麻酔医療に求められるのは、術後の回復まで見据えた診療だ。特に、麻酔管理に必要な情報量が増加している現在、麻酔科医が全ての情報を把握しながら、的確に管理するのは難しくなっている。この課題を解決するため、AI技術を活用し、未来の患者状態を予測する取り組みが注目されている。
この共同研究は、手術中に患者の血圧や心拍数などのバイタルデータをAIがリアルタイムで分析し、将来の状態を予測するシステムの開発を目的としている。すでに戸塚共立第2病院から提供された手術中の匿名化データを基に、データサイエンティストが予測アルゴリズムを試作している。AIによる予測は、合併症リスクの高い患者に対する医療の質を向上させ、麻酔管理の負担を軽減する。
本研究は2024年9月に英国麻酔学会学術大会で発表される予定。ヨーロッパで権威のある学会での発表は、AI技術の麻酔医療への応用が国際的にも注目されている証でもある。
今後、開発されたAI予測モデルは共同研究先の医療機関で実証実験が行われ、富士フィルムメディカル株式会社の麻酔管理システムからリアルタイムデータを利用し、アルゴリズムの有効性を検証する。検証後は実用化を目指し、上市に向けた取り組みが進められる。
日本国内だけでなく、国際的にも注目されるこの技術は、麻酔管理の未来を切り開く可能性を秘めている。

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